時有ノ少女

□第壱幕
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ロウェンが生きていた時代から
約1500年後。
これほどの時が経ったにもかかわらず、
ロウェン、そしてその子孫にかけられた
呪いは解かれていなかった。

何人もの子孫が呪いを解こうとしたが、
呪いを解く手がかりさえ掴めなかった。
中には魔女を探そうとした者もいたが、
見つけられず、皆死の時を迎えた。

† † † † † † † † † † † †

蒼嶺国《そうれいこく》の首都、
赤根《あかね》。
その端にある小さな宿屋の中で
一人の少女が働いていた。

「いらっしゃいませ!!
そこの旅の方、ここで一晩休んでいきませんか?」

少女の名前は翡翠《ひすい》。
右手に刻まれているであろう数字は
今、包帯の下に隠されている。

呪いの噂は間違って広まり、
刻まれた数字を見られてしまったら
最悪殺される危険もあるのだ。

翡翠が働いている宿の女将は
同じ村出身のため、呪いの真実を知っている。
だから翡翠を雇ってくれているのだ。

翡翠の家は貧しく、両親と病弱な弟を養うために
翡翠が出稼ぎに出ている状態だ。

「おい、宿代はいくらだ」

近くを通りがかった旅人らしき男が声をかけてくる。

「一泊150鈴《リン》よ。
夕食と朝食つきは230鈴っ!!」

「………安いな」

「でしょ!?今だけなんだからっ!!」

翡翠は旅人にずいっと近づく。
客は商売の獲物。
“狙った獲物は逃がさない”のが翡翠の信条だ。

「………」

旅人はその迫力にたじろぐ。
ここまで来たらあと一歩だ。

「どう!?」

とどめと言わんばかりに声を張り上げる。
すると、旅人は苦笑して頷いた。

「よろしく頼む」

心の中でよっしゃ!!と叫ぶが、
それを表に出さないようにしつつ
旅人を案内した。

(あと少しお金が貯まれば………)

そうしたら旅に出て、この呪いを解くすべを探さなければ。
ゆっくりと、だが確実に終わりの時は近づいている。
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