GEASSX

□エリンジュームの指輪 第8話
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ルルーシュは母の日記帳を読み進むに連れて重大な事がわかった。

オグルと魔法使いの戦い、母の気持ち、母の決意、母の行動。
母マリアンヌはわざと女王に成らなかった。彼女は裏からオグルを止めるつもりだったのだろう。


「お母様の日記は急に途切れてるわ…」
「いつですか」
「この日」


日付は段々バラバラに散り、最後のページは一言のみとなった。
「私ならできる」という決意の言葉だけ。


「ルルーシュ様、これはきっとオグルとの決戦前夜でございましょう」
「やっぱりお母様はオグルを止めようとしていたのね…このことを女王はご存知かしら」
「日記を開けていないならば見ていない可能性が高いでしょう。」
「…そうよね」


ルルーシュがそう言った時、玄関が開く音がした。彼女はユーフェミアが帰ってきたと思い、すぐ様この事を報告しようと部屋を出た。


「ユフィ!」
「…」
「ユフィ聞いて、お母様が」
「聞きたくないですわ!」
「でも、話さなくてはならないの」
「聞きたくないと言っていますわ!
出て行って下さい!
私の気持ちなんて分からないくせに!ルルーシュは!
いつもいつも何でも出来てみんなから好かれていますわ!
そんな人に私の気持ちなんてわかりませんわ!話しかけないで!出て行って!」


ユーフェミアはルルーシュの手から日記を奪うと床に叩きつけた。彼女は怒り心頭して怒鳴った。


「何をするのユーフェミア!」
「どうせ私は出来損ないよ!
ルルーシュとは違う!
アグランディスマン!
フュジ=エキュム(泡の銃)!!」


杖から放たれた泡はルルーシュに纏わり付いてまず視界を奪う。


「ユフィ!やめて!ユフィ!」


ルルーシュが反撃をしない間に、ユーフェミアは彼女を追い出した。
玄関から鞄と共に追い出されたルルーシュは尻餅を着いて何度か前転をしてようやく動きを止めた。


「…ユフィ」
「…ルルーシュ様、一先ずロイドの所にでも行きましょう。」
「…そうね」


トランクには食べかけのチョコレート、アイボリーのネグリジェ、ホネホネキャンディーにユーフェミアがくれたヘアーブラシ。
どれもルルーシュの好きなものばかり。


「…あんなに怒ったユフィ初めて見たわ」


石畳に落ちる影だけかお供。夕暮れの匂いと薄闇の中、家に帰る人々の間をすり抜ける。


(何処にも行く当てがないわ…)


ロイドは居なかった。
ロイドがいないから当然セシルも居なかった。ルルーシュは何度かノックをしたが諦めた。

とぼとぼと歩き始めて、水の小道の橋の下に腰を下ろした。


「…今日はここで野宿でもする?」
「ルルーシュ様、危ないです。
この様な場所ではなくもっとちゃんとした場所へ…」
「何をしているんだい?」


橋の上から降りかかる声。
もう馴染んでしまった優しい声。
甘くて、チョコレートみたいにしっとり艶やかで滑らかな、女の子なら誰でも好きな声。


「…散歩よ」
「散歩、もう夕闇だよ」
「知ってるわ」


橋の上のジャスミンの木々からこぼれ落ちる白い花。香りがルルーシュを纏い、花の白はドレスのように広がる。


「まるで迷子の花嫁だ」
「…貴方は差し詰め王子様ね」
「私が王子様なら、君はお姫様だ」
「お姫様は御免だわ」
「何故」
「お姫様は、弱虫で居られないもの」
「君は気高い」


眼鏡橋に隣接する階段をゆっくりと降りてくる。革靴が一段一段いい音を鳴らす。


「君はとても気高い、弱さを知った強いお姫様だ。」
「貴方は黒の王子様ね、シュナイゼル」
「私はご覧の通り白いよ」


シュナイゼルは白いニットを着ていた。ルルーシュの白い花のドレスと並べばまるで結婚式の様だ。


「貴方には騙されないわ」
「騙さないよ、君といる時…私は心から素直になれる。」


シュナイゼルは隣に座った。
ルルーシュの膝に乗っていたオランジェが威嚇をするがものともしない。
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