小説

□吹奏楽部の暗黒史〜屋上解放運動編〜
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翌日、遥と琴乃は屋上を開放してくれないかと顧問の坂井先生のもとを訪れていた。

「屋上の解放ですか。それは難しいですね」
「え、何で?」
「屋上は、授業をサボってたむろをする生徒が後を絶たないということで、立ち入り禁止になったので」
「じゃぁ、じゃぁ。部活で使う時だけなら良いでしょ?」
「それも、難しいでしょうね」
「なんで?」
「安全性の問題からですね」
「えー。だって、柵張ってあるじゃん。落ちないよ」
「・・・分かりました。一応、職員会議で提案してみましょう。それで、いいですか?」


――数日後

遥たちは坂井先生に呼ばれ、、社会科準備室に来ていた。

「センセー。どうだった?」
「一応、職員会議で提案しては見ましたが、やはり、無理でした」
「えぇっ!! どうして?」
「…体育科じゃない? 屋上で吹かれたら、グラウンドで部活してる運動部たちの邪魔になるって」
「森さんの言うとおりですよ」
「なにそれ!! うちらの音は騒音ってわけ!? 訳分かんないんですけど!!」

そう言うと、遥は社会科準備室を飛び出した。

「はぁ」

置いてきぼりを食らった形になった琴乃からしてみれば、遥の思考の方が訳が分からなかった。


社会科準備室を飛び出した遥は、そのまま部室に直行し、作戦会議を立てていた。

「遥。諦めなよ。別に、屋上で吹かなくても部室でいいじゃん」

これは、楽器を外に持っていけない千波の意見だ。

「何で、そこまで屋上にこだわるの?」

こっちは、副部長の真由の質問。

「だって、相手が体育科だよ? 対体育科だから!! それ以外に理由なんてないよ」
「遥ぁ。今のシャレ?」

そして、これは天然娘舞である。

「舞は黙ってて。ね? ね? 屋上欲しくなったでしょ? 屋上があれば、天体観測もできるよ」
「いや、別にしたくないけど」
「千波〜」
「対体育科ってことなら、私は乗ってもいいよ」

そう手を挙げたのは心愛だ。

「心愛、ホント!? ありがとーっ!!」
「で? 作戦は?」
「屋上だからねぇ。そうとうなことしないと解放してくれなさそうだよね」
「とりあえず、体育館をペンキまみれにする?」
「そうだね。あと、グラウンドに石灰まき散らそう!!」

所詮、高校生。考えることは子供なみだ。

「なんか、盛り上がってるけど」
「今回、ウチらは置いてきぼりか」

ガラッ

そこに、社会科準備室に置いてきぼりをくらった琴乃が入ってきた。

「あ、琴乃!! 今、屋上解放の作戦会議してるんだけど」
「あぁ。それなら、解決したけど」
「へ?」
「屋上、好きに使っていいって。はい、鍵。あぁ、鍵は屋上使うたびに坂井センセのとこに借りに行くことになったから」
「いや、待って待って。いつの間に?」
「さっき、坂井センセともう一度体育科に交渉に行ってきた」
「それで、どうしたの?」
「ん? 金と権力使っただけだけど」
「金と権力!? 何それ」
「切り札は最後まで取っておくってこと。かな」
「えー。何それー」

この屋上解放運動に田中さんが関わっていることは、言うまでもない。

…Fin
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