小説
□港高校生徒会物語
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「遠足の下見やろ? 楽しみやなぁ〜」
紅葉が見事な登山道を歩きながら港高校生徒会執行部会計の金田笑が声を上げた。
「笑。遊びに行くのではありませんよ」
それを見て、会長が窘めた。
毎年、2年生が修学旅行に行っている期間、居残りをしている1年生と3年生には“秋の遠足”という行事がある。
そして、その遠足の下見に行くのが今日の生徒会執行部メンバーの仕事であった。
「えぇやん。生徒が楽しめるように行く下見やろ? ほなら、ワイらが楽しまな意味ないやん。せやなぁ? 泰希」
生徒会執行部唯一のおバカキャラである笑が仲間を探して男子副会長の山田泰希にふった。
「え、僕ですか!?」
「泰希ってアンタ1人しかいないじゃん。しっかりしなよ」
そう言いながら女子副会長の熊谷千波は、泰希にグーでパンチを食らわせた。
「い、痛いよ。熊谷さん…」
そんな副会長2人をみて、双子の書記である河野美春と秋良は…。
「本当に仲良いよね」
「仲、良いのかな…アレ」
そんな会話をしていた。
「ところで、会長? 今年の遠足ってどこ行くんやったっけ?」
「笑…知らないでこんなトコまで来たわけ?」
「せやかて、昨日の晩にメールもろおて、今日、遠足の下見に行くゆうてたから、来たんやで? 行先なんて書いてなかったっちゅーねん」
「いや、そのメールの前に生徒会で話し合って決めたじゃん。今年は、紅葉が綺麗だから、軽く紅葉狩りして、山頂で弁当食べるって」
「そーやったか? ワイ、その話の時寝とったんかな」
「それは、笑が悪い」
「無駄話をしていないで、危険が無いか確認をしてください」
「あ、ゴメン。会長」
「せやかてなぁ、会長。こんなちっこい山に危険なんてあるかいな」
「でも、笑君…何かあった時に大変ですし」
「泰希は心配しすぎやねん。――ん? なんやこの祠」
歩いている最中に笑が藪の中にひっそりとたたずむ小さな祠を見つけた。
「山神様とかを祀ってあるのかな?」
「でも、こんなにひっそりと?」
「なんや、きったない祠やなぁ」
笑は、藪の中に入ると、祠に手を掛けた。
「笑君…。止めた方がいいんじゃないですか」
「大丈夫やって。泰希はホンマに心配性やなぁ〜」
笑は泰希が止めるのも聞かずに祠の中に手を突っこんだ。
「きったな〜。クモの巣はってるやん」
「会長。熊谷さん。あの…笑君が…」
「ほっときゃいいでしょ」
「笑、先に行きますよ」
心配する泰希をよそに千波と会長はたいして気にしていない様子だ。
「ん? なんや!?」
笑が声を上げた。
「え、笑君? どうしたんです……えっ!!」
「何!? この煙」
泰希に続き、千波も異変に気づいたようだ。
「霧ですか。山の天気は変わりやすいと言いますし」
「でも、急に出てきたような?」
「うん。ちょっと不自然かも」
「あかん。何やこれ」
「ちょっと、笑!? 何したの?」
「分からへんねん。急に祠から煙が出てきてん」
「山神様の祟り!?」
「そうなの? 秋良君」
「分からないけど、あの祠が本当に山神様を祀ってあるものだったら、笑君が触ったことに怒ってるのかも」
「ちょっと、笑っ!! 何してるの!!」
「ワイかて分からへんし」
「わわわわ。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい…」
「泰希、うるさい」
「みんな、落ち着きなさい」