小説

□南港中学校物語
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遥たちの住む港市には、3つの県立中学がある。端から、南港中学、東港中学、そして、北港中学。何故、西が無いかというと、西には山しかなく人が住めないからだ。
今更、何故中学の話が出てくるのかというと、今回は南港中学のお話だからなのです。


――今から3年前。

西村遥、熊谷千波、中学3年生。

「あ、遥。日直日誌出せって担任が言ってたよ」
「んー。今書いてる途中〜。千波、今日の出来事って何かあったっけ?」
「そんなの、適当に男子のバカが箒振り回して窓ガラス割りました。的なコト書いときゃいいでしょ」
「いやいやいや。それ、嘘だから。嘘はかけないから。ってか、アタシが突っ込みに転じてる時点でおかしいから」
「早く帰りたいんだけど」
「ちょっと待ってよ。もうすぐ終わるから」

遥と千波がそんなやり取りをしていると、頭上から声が掛った。

「おい。おめぇら、何やってんだよ?」
「あ、なっちゃん!!」

この子は夏日優希、通称“なっちゃん”といって、遥や千波のクラスメイトです。
男勝りな、とってもカッコいい女の子なのです。

「遥が日誌書くの遅くて、置いて帰ろうか迷ってる所」
「そりゃ、置いて帰るべきだろ」
「やっぱ、だよね」
「えぇ〜。2人ともヒドイ」
「だったら、さっさとバカが窓ガラス割ったって書いて出してこいよ」
「それより、今日のセンセーの給食にチョークの粉を入れたのは長谷です。とかの方がよくね?」
「いや、担任、給食にチョークの粉が入ってたなんて気づいてないから」
「だから教えてやらねぇと」
「いやでしょ。そんな教えられかた」

千波となっちゃんが言い合っている間も、遥はずっと日誌の内容を考えていた。

「じゃぁ、昨日センセーの机の上にあったペーパーウェイト真っ二つにしたのは、長谷です。とかどうよ」
「いや、それ、昨日の出来事だから。それに、なんで長谷のいじめの報告ばっかり?」
「やっぱ、気付かせてやらねぇとだろ? 人として」
「その前に、人として止めてやれよ」
「いやだね。めんどくせー。それに、観てる分には楽しいんだよ」
「遥じゃないけど、ヒドイよ。なっちゃん」

くどいようだが、この間も遥は今日の出来事の内容を考えていた。

「そうか? やってんのは、長谷とその一派でアタシは何にもやってねぇけどな」
「いや、観てるのも同罪だから」
「それ言ったら、千波だってそうだろうがよ」
「ま、まぁ。そうだけど…」
「そうだ! なら、女子たちにセンセーがキモイって言わせてるのは長谷です。とか?」
「いや、それは長谷のせいじゃないし」
「そうだよな。千波もセンセーのことキモイっつってたしな」
「それ言ったら、なっちゃんだって」
「おうよ。だって、アイツ、キモイだろ?」
「それ言ったら、終わりでしょ」

「そうだっ!!」

今の今まで今日の出来事を考えていた遥が急に声を上げた。

「どうした?」
「今日の出来事。特になし! でいいかな?」

「「・・・・・・うん」」

「え? なに? 今の間」
「遥。今までのアタシたちの会話聞いてなかったの?」
「え? ぼんやりと」
「いや、うん。いいや。じゃぁ」
「じゃぁ、さっさとソレ書いて出してこいよ。遥。待っててやるからよ」
「うんっ!!」
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