小説

□吹奏楽部の暗黒史〜屋上解放運動編〜
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「ぽかぽかあったかくて気持ちいいね」

今日も今日とて彼女達は窓辺に設置された大きめのテーブルの上でだらけていた。

「あー。外で吹けたらもっと気持ちいいんだろうけどね」
「じゃぁ、外の非常階段で吹いてきたら? アタシはパスだけど」

遥の意見に、千波が提案をする。が、遥の楽器はトロンボーンで外に持っていくことが出来るが、千波の楽器は打楽器なので、バチくらいしかもっていけないのだ。

「そっか!! こっとの♪ 外行って吹いて来ない?」
「別に良いけど。花子たちじゃなくていいの?」
「だって、花子は…」

遥の視線の先をたどると巨大なテューバを吹いている花子の姿があった。

「それに舞は…」

続いて、舞の方を見ると譜面台に躓いて危うく楽器ごと転倒寸前だった。

「楽器、壊しそうじゃん」
「あぁ」
「咲良と由愛ちゃんはまだ来てないし、真由と心愛はそうゆうの嫌そうだし」
「まぁ、そういうことなら」

そして、遥は琴乃を連れて外に出ていった。

「やっぱ、外で吹くのが良いよね」
「でも、ここまで来るのがメンドイ」

遥たちのいる非常階段にくるまでには、一度玄関から外に出なくてはならないのだ。
そして、その部室から玄関を通り非常階段にたどりつくまで、何人の生徒たちから好奇の視線を浴びたことだろうか。

「これなら、グラウンドの方が近いよね」

そう言って遥は笑うが、グラウンドには運動部達がいる。体育科教師からの非難は免れないだろう。

「どっか、いいとこないかな〜」
「…屋上。とか?」
「でも、あそこって立ち入り禁止じゃん」
「そこを何とかしてきたのが、悪名高い吹奏楽部なんじゃなかったっけ?」
「!! そうだよね!!」

珍しい琴乃の後押しにより、屋上解放運動の火ぶたが切って落とされた。
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