□Is his real nature…?
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先日、準備が整い次第正体を明かすと宣言した田中さんに呼ばれ、由愛と琴乃は、都内にある帝京ホテルのロイヤルスイートルームに来ていた。

「前々から聞こうと思ってたんですけど」

琴乃は、目の前を歩く蒼に問いかけた。

「はい。何でしょう」
「何故、田中さんに会うたびに着替えないといけないんですかね? こっちも、わざわざ気を使って制服出来てるんだからそれでいいじゃないですか」

現在、琴乃は田中さんチョイスの薄緑色のドレスを、そして由愛はピンク色のドレスをまとっていた。

「私は嬉しいよ。可愛いお洋服が着れて」
「まぁ…由愛ちゃんがいいなら…いいけど」
「では、こちらのお部屋で少々お待ちください。もうじき旦那様もいらっしゃいますので」

そう言うと、蒼はお茶の準備を手早く済ませると部屋を出て行ってしまった。

「琴ちゃん…」
「大丈夫。なるようにしかならないから」

これは、琴乃がよく使う言葉だ。本か何かから抜粋しているらしい。

「うん。そうだよね。大丈夫だよね」

由愛が微笑んだ時、ガチャリと音がし、見慣れたダークブラウンのスーツ姿の田中さんともう一人、田中さんと同じ年くらいの老人が入ってきた。

「どちら様ですか? 今日は、田中さんが本当の事を話すと言ったから来たんですよ。そんな日に他人を呼ぶなんて」
「ほほう。こちらは、森さんかな?」
「・・・どうして、名前」
「噂はかねがね。田中から聞いているよ」
「どんな噂なんだか…」
「そして――」

謎の人物は今度は由愛の方に視線を向けた。

「は、初めまして。藤原由愛です」
「存じていますよ。これは、本当に可愛らしい方だ」

このままでは、この謎の人に話を持っていかれると思った琴乃は、話の軌道修正に移った。

「で、その人は誰なんですか」
「彼は、私の悪友でね」
「どうも、初めましてお嬢さん方。私、権田厳司というものです」
「権田厳司さん!? って、あの権田グループの会長の」

由愛が言うと、田中さんが「元ですがね」と付け足した。

「どういうことです?」
「あれは、数ヶ月前のことでした」

田中さんは振り返るように語り始めた。
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