年間行事

□コンピ研のクリスマス会
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「なぁー。もーすぐクリスマスだよなー?」
「え? その前に期末テストでしょ?」
「だーいじょーぶ。俺、天才だからー」
「オレは大丈夫じゃないの。邪魔しないでよ」

これは、2年2組のテスト週間の光景である。

「実はー、昨日、けーすけとーツリー飾ったんだー」
「ツリー? ってクリスマスツリー?」
「ううん。スカイツリー♪」
「・・・・・・」

蒼太は呆れてものも言えなかった。そして、友人の中で数少ない常識人である慶介の姿を探すも、どうやら教室にはいないようだ。

「んー? けーすけ探してるのかー?」
「だって、オレだけじゃ、ひーちゃんの相手できないし」
「なんだとー!! なぁーのくせに!!」

そんな紘都の抗議を右から左に聞き流しながら蒼太は、トイレかな? などと考えていた。

「けーすけなら、部室だぞー」
「えっ!! まだ授業あるよ」

これから6時限目の古文が始まるのだ。

「なぁー! 俺たちも行くぞーっ!!」
「え? どこに」
「部室に決まってるだろー」
「え、授業は?」
「古文なんてー出る価値なーし」

そういうと紘都は蒼太の腕をつかみ教室を飛び出した。
紘都に引っ張られながら窓の外を見ると一面に薄らと雪が積もっていた。

「うわ。今年はホワイトクリスマスになるといいなぁ」

そんなことを言いながら紘都に連れてこられた部室には、部室の天井まで届いている、東京に立っているソレと同じものがそびえたっていた。

「すっごーいだろー。スカイツリーのミニチュア版だぞー」
「へぇー。どうしたの? これ」
「作ったー」
「すご。けーちゃんすごいね。一人で作ったの?」

スカイツリーの下で電飾を飾り付けていた慶介に声をかけると後ろから抗議の声が上がった。

「作ったのは、俺だーっ!!」
「え、ひーちゃんが作ったの!?」
「そ。けーすけは飾り係」
「ってかさぁ、そもそもなんでクリスマスにスカイツリー?」
「普通にツリーを飾っても面白くないからとか、紘都が言い出してな」
「あぁ。ひーちゃんならいいそう」
「そして、部活中も授業中もコレ作ってたんだぞ。しかも、1か月前から」
「うわー、ひーちゃんってもしかしなくても、バカ?」
「まぁ、否定はしないな」
「お前らっ! 聞こえてんぞっ!!」

紘都は怒鳴りつけながらも、どこから持ってきたのか、丸テーブルをツリーの近くに置いた。

「どうしたの? それ」
「んー? 演劇部から無断拝借」
「いや、パクってきたっていいなよ」
「それと、これっ!!」

紘都はなぜか部室に備え付けられていた冷蔵庫からオードブルとシャンメリ、そして手作りらしいケーキを取り出した。

「ど、どうしたの!?」
「部費で買っちゃったー」
「買っちゃったって……。いいの? けーちゃん」
「いいもなにも、紘都が部費握ってるからな」
「っつーわけで、クリスマス会やるぞ!!」
「え? 今から? ってか、今日!?」
「紘都、クリスマス気分に浸りたいのはわかるが、あと1週間もあるぞ」
「いーのーっ!! だって、来週から冬休みだしー」
「理由になってないよ、ひーちゃん」
「だーってー、なぁーたち冬休みも部活だろー? それにー、今日雪積もったじゃーん」
「最後のは意味わかんないけど、まぁ、古文ならサボってもいいかな」
「蒼太まで・・・」
「けーすけもいいだろ?」
「いいもなにも、5時限目サボらせといてよく言う。ノート、ちゃんととってくれたよな?」

慶介の質問を右から左に聞き流し、クリスマス会が開催された。
哀れ、慶介。たぶん、5時間目は数学で最後のテスト範囲をやっていただろうに。。

こうして、紘都、蒼太、慶介のクリスマス会が幕を開けた。このままクリスマス気分で期末テストに臨みそのテストが白い雪のように白紙に近い状態で提出され、サンタの帽子のように赤い通知表がくるのは間違いないだろう。


                …Fin

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