年間行事

□定期演奏会っ!!
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定期演奏会、略して定演。それは、吹奏楽部の血と汗と涙の結晶。この日のため、彼女たちは、放課後はおろか夏休みまでも犠牲にしてきたのだ。それはもう、夏休みの課題を放棄するほどに。

そして、定期演奏会まで1週間。


「あと、1週間だねっ♪」
「あぁ、うん」
「どうしたの? みんなテンション低くない!?」
「いや、テンション高い方がおかしいからね」
「遥、緊張しないの?」
「緊張? は、しないかなぁ。ほら、アタシ部長だし」
「いや、意味分かんないし」
「どどどど、どうしよう。ソロがぁ…」
「舞、おちつけ。それに、ココにいるほぼ全員、ソロあるから」
「でも、今年はホール広いんでしょ?」
「うん。坂井センセーが頑張って、市民会館の大ホール借りてくれたからね」

ちなみに、去年までは公民館の隣に立つ、体育館の半分ほどの広さしかないショボイホールでの発表だったのだ。

「でも、大丈夫だよ。アタシ達のモットーは“適当かつ完璧に!!”だから。適当にやって、大成功させよっ!!」
「それは、出来るヤツの台詞だから」
「遥ぁ。失敗したらどうしよう…」
「咲良。大丈夫だよ。アタシがついてるんだからっ!!」
「うん。そうだよね」
「いいよね。同じ学年の人がいるパートは」
「確かに。でも、ボーンしかなくね?」
「いや、一応サックスもそうだし」
「でも、でも。琴乃はアルトで、私はテナーだもん。全然違うよ。ね、琴乃っ」
「え? 聞いてなかった」

琴乃は、手にしていた携帯電話を隠すようにポケットにしまった。

「もぉ〜っ!!」
「この子も緊張してなさそうだよね」
「ま、コンクールよりは緊張しないでしょ」
「そっか。中学の頃吹奏楽コンクールでてるんだっけ」
「まぁ」
「琴乃〜。どうしたら、緊張しない?」
「・・・気合い?」
「琴乃は気合いで緊張しなくなったの?」
「全然。気合いとか一番嫌いな言葉だし」
「おい。さっきまでと言ってることが違うぞ」
「うぅ〜。千波〜」
「ごめん。ちょっと、電話してくる」

そういうと琴乃は部室を出て行ってしまった。

「相変わらず、よく分かんない子だ」
「気分屋なんだよね」

「あ、じゃぁさ。緊張しないように、鬼ごっこ、しようよっ!!」
「はぃ!? どうして、そんな発想になるわけ?」
「ほら、緊張をほぐすのと、息抜きに♪」
「うぅ〜。緊張しなくなるならやる〜」
「ホゥ!! やる〜」
「ま、やってもいいよ」

舞・花子・心愛のいつものメンバーは参加決定だ。

「うん。楽しそうだね」
「まぁ、息抜きになら」

そして、咲良と真由。

「わぁ〜。楽しそうだね。遥ちゃん」

さらに、由愛も。琴乃が不在のため、残りは千波だけだが・・・

「はぁ。まぁ、いいか。誰が鬼やるの?」
「ア・タ・シッ♪」

ガラガラガラ

そこに、これまた何というグッドタイミングなのだろうか。後輩の3人が入ってきた。

「あ、ナーイスタイミング。蒼太君たちもやらない? 鬼ごっこ」
「あ、部長。お疲れ様です」
「っつーか、鬼ごっこって何ッスか?」
「儀式か何か、ですか?」
「ううん。定演前の緊張をほぐそうってわけ。それで、やる?」
「まぁ、いいッスけど」
「オレも、いいですよ」
「じゃぁ、はい」
「よーし。じゃぁ、100数えるから全員逃げてね。あ、逃げる場所は校内に限りまーす」

そして、遥は100を数え始めた。
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