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□ファーストコンタクト
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学校を出ると、校門にピタリとつけられた黒塗りの細長い車があった。
「すごぉい。これってリムジン!?」
「わざわざ本土から持ってきたんですか」
「初めてのお客様をお迎えに上がるのに、普通の自家用車では失礼だと厳司様が申されましたので」
「へぇ」
「では、どうぞ」
そういうと、蒼は後部座席といっていいのか分からないが、最後尾のドアを手前に引いた。
「ありがとう」
「どうも」
琴乃と由愛が車に乗り込むと完璧なタイミングで車は発車した。
しかも、発車時に感じる揺れもほとんど感じず、椅子もフカフカで窓ガラスもくもり1つない完璧なものだった。
そんな車に揺られること10分。車が行きついた先は島内では有名なホテルヤマトだった。
「ここですか?」
「はい。こちらで厳司様がお待ちです」
「どこのお部屋ですか?」
「最上階のスイートルームです」
蒼の後について最上階まで登ると、そこには部屋が2部屋しかなく、その両方が一泊ウン十万もする豪華絢爛な部屋になっていた。
「すっごぉいっ!! 私こんなところ初めて来たよ」
「では、こちらの部屋でお待ちください。只今、厳司様をお呼びいたします」
丁寧に頭を下げ部屋を出て行った蒼を見送ると、琴乃と由愛はヒソヒソ話を始めた。
「琴ちゃん。こんな凄い部屋に泊ってる人が私たちに何の用かな?」
「さぁね。ま、やばくなったら全力で逃げよ」
「う、うん。そうだね」
それから、まつこと5分弱。軽いノックの後にその人物は入ってきた。
「失礼しますよ」
入ってきたのは、ダークブラウンのスーツ姿に白髪交じりなのだが爺くさくない、上品なジジイだった。
「あの人が田中厳司様かな?」
「そうなんじゃない?」
「初めまして、かな。田中厳司というものです」
「こ、こんにちは。藤原由愛です」
「・・・森琴乃」
「あ、あの。私たちに・・・何の御用ですか?」
「まぁ、その前に紅茶でもいかがですか? 琉聖、蒼、譲」
パン パン パン
厳司が手を叩くと、先ほどの藤咲蒼とその他に、同じような年頃の男の子が2人、ティーセットとケーキを持って入ってきた。
「粗茶ですが」
蒼が、これまた高そうなティーカップに入れられた紅茶を琴乃と由愛の前に差し出した。
「わぁ〜。ありがとう」
「ケーキもどうぞ、藤原嬢」
「ん? えーと・・・」
「初めまして。俺は執事の南琉聖って言うんだ」
「藤原由愛です。よろしくお願いします」
「よろしく」
「琉聖さん、邪魔です」
ドンッと琉聖を押しのけると、琉聖より少し小さめの少年がヒョッコリ顔を出した。
「初めまして。執事の宮本譲と申します」
「は、初めまして。」
「これ、お前たち。藤原さんが困っているじゃないか。お茶を出したらさっさと下がりなさい」
「はーい」
「では、失礼いたしました」
執事? にしては幼く、しかも執拗に自分が執事だと強調する彼らは厳司に言われるまま部屋を出て行った。