□Is his real nature…?
2ページ/3ページ

――数ヶ月前

「本当に良いんだな」
「あぁ。もちろんさ」

田中さんと権田さんはそれぞれダーツの矢を手にしている。
そして、2人の間におかれた丸テーブルには、1枚の権利書と書かれた紙が置かれていた。

そして、2人の手から次々と矢が放たれていった。

・・・30分後。

「約束だったよな」
「分かっている」

権田さんがふてくされたように、テーブルの上にあった権利書を田中さんに渡した。


「と、いうわけなんですよ」
「いや、ちっとも分かりませんよ。その権利書って何の権利なんですか」

琴乃の突っ込みに、田中さんも権田さんも同時に、「あぁ」と頷いた。

「それは、権田グループの権利書です」
「は?」
「つまり、権田グループが運営しているホテル業や病院などを全て私が得ることができる権利です」
「それって、事実上の権田グループの解散では?」
「そうなりますね」
「でも、権田グループってまた私たちの島に残ってますよ? ねぇ、琴ちゃん」
「私は、権利は貰いましたが会社を貰うつもりはありませんよ」
「こいつは、利益だけ持って行くんだ」
「それは、言葉が悪い。私は、名誉会長だよ。君はただの会長じゃないか」

またまた、話が脱線しかけているようだ。

「で。田中さんは、田中厳司ではないということでいいんですか?」
「あぁ。そうでしたね。私の本当の名前は、田中太郎と申します」

どこかできいたような。琴乃と由愛が顔を見合わせると、ピンときた。
コンピ研の広島紘都が常々田中さんの事を、タローさんと呼んでいた。

「じゃぁ、紘都君は田中さんの正体を知ってたってこと?」
「広島君の場合は、適当な名前を当てはめていただけでしょう。まぁ、私の正体をしろうと、ウチのネットワークにハッキングを掛けてきたようですが、全て撃砕させました」

このジジイ、意外とやるじゃん。と琴乃は少しだけ感心した。由愛は、田中さんってすごいんだぁ〜。とイマイチ分かっていない模様。

「えっと…私、頭がこんがらがっちゃった。えっと、田中さんが権田さんの会社の社長さんなの?」
「いえ、名誉会長です」
「前、テレビで名誉会長は名前だけだって聞いたことあるんですけど」
「そんなことありませんよ。会長の裏で実験を握っているのは私ですからね」

田中さんは得意げだ。

「それで、好き勝手出来たってわけですか」
「田中さんすごーい」
「いえいえ。そんなことありませんよ」
「と、いうか、何故こんなややこしいことになったんですか? 名誉会長だかなんだか知りませんけど、それならそうと、普通に田中太郎と名乗れば良いだけの話でしょ?」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ