□七夕
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「できた」

一番に琴乃が声を上げた。
書くことが無いと言っていた割に1番最初に書きあげてしまった。

「わぁ〜。何て書いたの?」
「明日、晴れますように」
「そうだね。天の川見れるといいね」
「それもあるけど…」
「森様はお優しいですね」
「別に。他に書くことが無かっただけだし」
「ん? どういうこと?」
「七夕伝説の一説では、七夕の日に雨が降ると天の川の水嵩が増して、渡ることが出来ないそうなんです。なので、七夕の日に降る雨は、織姫と彦星が流す涙、催涙雨というそうです」
「そうなんだぁ〜。じゃぁ、私も」

『織姫様と彦星様が無事に会えますように』

「藤原様もお優しいですね」
「でも私、もう1つお願いがあるんだけど、いいかなぁ?」
「おう。いくらでも書けばいいさ」
「やった。じゃぁ」

『遥ちゃんたちが怪我をしませように』

「藤原嬢はやさしいな」
「そんなことないよ。みんなは、何て書いたの?」

「ボクは、背が伸びますように。です」
「だって、チビモリだもんな〜」
「あと、琉聖が早く死にますように」
「なんだと!?」

「琉聖君、女の子いじめちゃダメだよ」

琉聖とまもりのケンカに仲裁に入ったのは、意外にも由愛だった。

「また、蒼君にハリセンで叩かれちゃうよ」
「う。それはいやだな」
「大丈夫。蒼は、ボクには優しいから」
「じゃぁ、蒼君は何て書いたの?」
「末永く旦那様の傍でお世話ができますように。と」
「蒼君は、本当に田中さんの事好きなんだね」
「執事としては当然です」

「肩っ苦しいなぁ」
「そういう琉聖君は何て書いたの?」
「ん? 空が飛べますように」
「じょ、冗談だよね?」

恐る恐る琉聖の短冊を覗き込むと、本当に空が飛べますようにとかかれていた。

「うわ。琉聖。それ、いくらなんでも引くよ」
「てのは、冗談で、俺が書いたのは、琴乃嬢や藤原嬢たちと過ごす時間が1秒でも長くありますように。だ」
「ありがとう、琉聖君」

と、琉聖に抱きつこうとした由愛を琴乃が止めた。

「琴ちゃん?」
「虫がつきそうになってたから」
「ホント? ありがとう」
「どういたしまして」
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