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□誓い
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屋上に出ると、真夏にも関わらず涼風が身体を包む。
俺はこの日の大半を、此処で過ごした。別になにをする訳でもないのだが、なんとなくこの場所にいたかった。
関「しーんじょっ」
新「……関川」
珍しく雲ひとつない空をぼんやりと眺めていたら、男にしては少し高めの声がした。
顔を向ければ、そこには人懐っこい笑顔を浮かべる関川がいる。
関「やっぱ此処にいた。探したんだぜ?」
新「……俺をか?」
関「お前以外誰がいるよ」
軽く悪態を付き、関川は俺の隣に腰を降ろす。そのままポケットを探ると、煙草を止めて口が寂しいのか棒付キャンディーを口へと放り込んだ。
関「新庄ってさ、いつも1人でいるよな。なんで?」
新「……1人の方が、気が楽なんだ」
関「ふーん……でもよー、それって寂しくねえ?せっかく元に戻ったのに」
関川の言ってることは尤もだ。あの事件があってから、俺はずっと独りだった。こいつらの輪の中に、俺の居場所などないと思っていた。戻れる訳がないと。
けど奴らは、俺を仲間だと言ってくれた。散々御子柴と関川を傷付けた俺を、驚くほど優しく受け入れてくれた。
だからこそ俺は……。俺には、こいつらと一緒にいる勇気がない。何時かまた、こいつらの誰かを傷付けてしまうかもしれない。そう思うと、自分が怖くて仕方がない。
なにより俺は――
関「あん時のことなら、もう全然気にしてねえのに。俺今、新庄と野球できて実はすっげえ嬉しいんだからな?」
関川は俺に、無邪気な笑みを向けた。その笑顔に一瞬、胸が鳴るのを俺は感じた。
この笑顔に、俺は救われた。あの日俺は、自分の思いだけであんなにも関川を傷付けた。御子柴を傷付けた。
それなのに練習試合の前の日、関川は俺に10番のユニフォームを持ってきた。今目の前にある、この太陽みたいな笑顔を浮かべて。
――俺はもう二度と、この笑顔を傷付けたくねえ。
関「新庄?聞いてんのかよ」
新「え」
関「なんだよ?俺の顔、なんか付いてっか?」
関川に言われて初めて、無意識に見つめていたんだと気付いた。
首を傾げ不思議そうに問われて、思わず顔が赤くなる。
新「いや……気にするな」
関「……なあ、新庄」
新「あ?」
関「お前、彼女とか作んねえの?」
新「……は?」
関「新庄って、自分で思ってるより遥かにモテてんだぜ?なのに作んねえってことは……もしかして好きな奴がいるとか?」
“好きな奴”という言葉にドキッとした。
間違いじゃない。
確かに、俺には好きな奴がいる。好きになっちゃいけないことはわかっていた。だけど、好きになった。
――関川はなんて言うだろう。
ごめん、と困ったように笑うだろうか。
それとも、嬉しいと笑ってくれるだろうか。
はたまた気持ち悪ィと、俺を軽蔑するだろうか。
なあ関川。もし俺が、お前を好きだと言ったら、お前は、なんと言う?