箱庭聖譚曲
□3.障壁
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貴方は何も
知らないのでしょう?
……賢い貴方達なら、私が言った言葉の意味が解ると思ったのだけど。
引きずられながら呟くと、鼻で笑って一蹴された。
「ハッ、オレ達にとばっちりが来ないようにしたのか? 言っておくけどな、オレはそこまで他人の世話になる気はねえ!」
しばらく歩いて教室に声が届かない程度に遠ざかってからやっと腕を解放してもらえた。
「ルナ=ルーンフォーク!」
『はい?』
握力が強い、なんて掴まれた腕の痛みに思い、彼の顔を見上げると、どうやら怒っているらしい。感情がよく表に出る人だ。
「ああいう不快なことを言われたら言い返せ! 見てるこっちがムカついてくる」
『……なんで怒っているの?』
「〜〜〜っ、お前が! あいつらに! 言わせっぱなしにしてるからだろうがっっ!!」
空気が震えた。
彼の怒声には常人に出せない迫力がある。
『…………声が大きい』
「なっ……!?」
『……私のことでミスター・ナイトレイが怒る必要は無いわ』
私は、主の側にいられない従者。
『……言われているのはすべて本当のことだから、ね』
「たとえ本当だとしても、お前が責められることじゃないだろ」
それでも、本当のことだから、それにエイダに迷惑をかけてしまうから。
……ねぇ、貴方は、私がエイダの従者だということを知らないでしょう?
私がベザリウスの人間だと、
知っても尚、貴方は私にそう言える?
『……私を解ってくれる人だけが解ってくれていればいいの』
言いたい人には言わせておけばいい。
「リーオにも言われた。けどな……」
口ごもる姿に思ったこと。
彼は陰湿な行為を許せない。
卑怯なことが嫌いだから。
他人を放っておけない。
そして、
彼はベザリウスは憎めても人は憎めない。
ルナはエリオットの顔にそっと片手を伸ばし、そのまま……
「……あ?」
頬をつまんだ。
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