箱庭聖譚曲

□19.親友
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ここはあたしの席ね。そう言ってルナの隣の椅子に陣取るレイラ。彼女は非常に楽しそうな表情を浮かべていた。







「もうこーやって皆でお茶でも出来るスペースでもないとやってられないってのよ」


『貴女はどこの飲んだくれですか』



一気に紅茶を飲み干す姿はとてもではないが“お嬢様”には見えない。



「室内でも良いんじゃないかな」

「いつもの部屋で飲むことの何が楽しいものですか!
だいたい、お茶いれてくれる人いないし」



おおかた後者が本音だろう。図々しいことをケロリと言いのけたレイラは空になったティーカップをルナに差し出す。
彼女も手慣れた感じでそれに応えた。




「おい、ルナはおまえの使用人じゃねぇだろ」


「だってあたしお茶いれられないから。
あ、そーだルナ。今日のディナーは手料理がいいなぁ、スープはパイ包みのやつ」


『はいはい……』


「よかったらミスターたちもいかが?」


「人の話を聞け!」



ため息をつきながら紅茶を注ぐルナと、自分が作らないのを良いことに夕飯の準備の負担を増やそうとするレイラ。
まるで母親と娘のようだ。



エリオットは二人の会話に首を傾た。


「ルナがディナーを作るのか?」

『ええ、時々頼まれて……あまり美味しくないけれど』

「ちょっとルナ、あたしが味覚音痴だって言いたいの?」



レイラが知る料理人、料理長は数多にいると言えど、かつて彼女ほど自分の舌を満足にさせた人間はいないのだ。
まぁあるいはプロが作る料理にうんざりしただけかも知れないが、どちらにしろ美味しいことに変わりない。



「食べないと損よ」

「でも僕達が行くと大変じゃないかな」

『…作るなら二人も四人も変わらないわ』


ちなみに今日はエイダはオスカーとの外出でいないのだといえば、エリオットはあっさりと頷いた。


「じゃあ行く。……美味いもん作れよ」





その言葉に嬉しそうな表情を見せるルナをこっそり盗み見たレイラだった。









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