デュラ小説
□きっとどうしようもなく本気だったんだ
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臨也が振って振られる話
学級委員の仕事の資料を先生に渡した帰り道、臨也さんが告白されていた。
思わず立ち止まって覗いてしまう。
「バカだなぁ…」
臨也さんの声が聞こえた。
「え…?」
女の子が臨也さんにつられるように引きつった笑みをした。
「君さぁ、クラスで可愛いって騒がれてるらしいね」
一筋の希望の光。
彼女はそれを感じてすかさず頷いた。
それを遮るように。
臨也は淡々と言葉を紡ぎ出す。
「悪いけど」
「タイプじゃないから」
彼女は自分が振られたことに目を見開く。
しかし、彼女はその振られかたに疑問を持った。
「でも、可愛い子がタイプって…」
クラスで可愛いと騒がれてるとさっき言っていたから。
臨也だって自分の事可愛いと思っているんじゃないか。
それなのに。
タイプではない……?
彼女に疑問が渦巻く。
そんな彼女に臨也は最悪ともいえる、自分が本当に思ってた事を吐き捨てた。
「ああそれ?言っておくけど君全然可愛くないよ」
教室から走り出る彼女は扉の角にいた帝人には気づかないまま走り去った。
彼女がいなくなり、1人になった部屋で臨也は語る。
「俺には好きな人がいて、ライバルも多いからねぇ。君なんかに構ってる暇は無いんだよ…。ねぇ、ライバルの1人の帝人君?」
臨也は初めて帝人に視線を向けて、立ち聞きなんて悪趣味だね、と口を歪め笑った。
「…あなたこそ、酷い振り方しますよね。正臣が見てたら何て言うでしょうね」
帝人も笑い返す。
「………。」
正臣君を引き合いに出すなんて卑怯じゃない?
臨也は言おうとした言葉を飲み込んだ。
「…俺には、こんな下らない争いをしてる暇も無いんだよね」
「焦ってますね」
帝人を無視して臨也は教室をでる。
早く、早く正臣君を繋ぎ止めなければ。
俺は卑怯者だ。
他人に自分と同じ経験をさせ痛みを押し付けようとした。
痛みなど移るわけ無い。
分かっててもそうせずにはいられなかった。
(でも、どうしてだろう。正臣君に振られただけで)(こんなにも心が痛いだなんて)