デュラ小説
□手料理は誰のもの?
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「もうすぐ文化祭だね」
放課後の第二音楽室。
なぜか部屋の中央に鎮座しているパソコンデスクに肘をつきながら臨也は言った。
「だからなんなんですか」
端から練習する気がないのか、正臣はそう言いながらも帝人とハバヌキをしている。
「今年はなんかすんのか?」
そして、もう一人の部員静雄は、部屋の隅でケーキを食べていた。
「ねぇ、部長として言わせてもらうけどさぁ、もう少しどうにか出来ないの?」
はぁ、と溜め息を吐く臨也はこれでもかというぐらい眉間に皺を寄せた。
「どうにか、ですか?」
帝人は臨也の意図を読めず、首を傾げた。
「そう、どうにか。楽器買ってからあんまり練習してないでしょ。文化祭でライブするからせめて一曲弾けるようになろうよ」
珍しく真面目に話す臨也に、正臣は溜め息を吐いた。
「俺、まだギターイマイチなんすよねー」
「え、そうなの?じゃあ俺が手取り足取り教えてあげるよ」
嬉々として変な動きをする手を向けられ、正臣は思わずのけぞった。
「あ、正臣。僕上がりだよ」
「げっ。また俺が負けかよ!」
「じゃあ、今回の罰ゲームはね〜、夜御飯奢って?」
帝人のだした罰ゲームに、正臣はえぇ〜、と不満そうな声をあげた。
「今月ピンチなんですけどー、帝人さん」
「へー、そう。ファイト!」
「血も涙もない!?」
本気で悩んでいる正臣に、帝人は仕方ないなと微笑った。
「正臣の手作りでいいよ」
「あれ、君たち楽しそうな話してるね?俺も混ぜてよ」
「げ、臨也さん」
いつの間にか臨也はパソコンデスクから正臣と帝人の背後に移動していた。
「正臣君の料理俺も食べたいな〜」
「アンタに出す飯なんて無いですから」
両者引かない攻防を繰り広げる中で、カチリ‥という無機質な音が鳴った。
「臨也さんには関係ないですから。『僕の』正臣の手料理なんてあなたには一万光年早いですよ」
「帝人くん…」
バチバチと散る火花。
そんな二人をよそに、正臣は静雄と話していた。
「お前、料理つくれんのか?」
「はぁ、まあ一通りは。一人暮らしですし」
「へぇ、大したモンだな」
俺なんて、と呟いてる静雄。
ちょっと可愛いと思ってしまった正臣だった。
手料理は誰のもの?