おお振り
□栄口BD小説
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栄口が生まれてきた日に栄口を誰よりも喜ばせたい
栄口が大好きな俺にとっては至極当然のように浮かぶ考え
ロマンティックになんて出来ないかもしんないけど、精一杯お祝いするからね
8時を回り、人が多くなってきた教室。
人に聞こえないように、栄口おめでとうと昨日何回唱えたかどうか分からない言葉を呟いてみる。
本日、栄口の誕生日です。
一番におめでとう、っていたかったんだけど、ヘタレな俺は栄口を目の前にするとなにも言葉が出ませんでした。
(ホントは12時ピッタリに祝いたかったけど、本人に駄目出しを食らった)
はあ、とため息をついてみてもこの自分でも嫌になるヘタレた性格がなおるわけもなく。
ちなみに、栄口におめでとうを一番に言ったのは田島だ。
―あ、栄口おめっと!!
―覚えててくれたんだー。ありがとー、田島!
…といった感じだ。
「うわあああああん、くやしぃよぉ!!」
「るせぇ」
机に勢いよく突っ伏したら阿部の容赦ない一言。
なんで俺ってこんなに扱いがひどいのか未だに自分でもわかんないよ。
いや、こんなんだからなのか…?
「いいじゃんかぁー。今俺ショックで倒れそうなんだからさぁ。こんな時ぐらいそっとしておいてよ」
「どうせ栄口の誕生日一番に祝えなかったとかだろ?」
くだらねー、と吐き捨てる阿部にちょっとカチンときて、思わず大きな声が出た。
「くだんなくないし!俺にとってはすっごい大事なことなの!!」
俺にとって栄口は大事な存在だから。
だから、どんなふうに祝おう、とかもう大分前から考えてて。
それが実行できない自分がうざったくて、悔しくて。
ただ、悔しいだけ。阿部にも八つ当たりしているだけなのかもしれない。
「う…、っ」
何もかも悔しくて、ちょっとだけ涙が出た。
誰にも見られないようにそっと顔を埋めたら、そっと頭に手が乗っかって、ぽんぽんと優しく2回叩かれる。
「あべ…」
「べつにさ、順番なんかこだわんなくったって、栄口はお前がおめでとうって言ってくれるだけで嬉しいってさ、俺は…思う」
俺が顔を上げると、阿部はため息を一つ溢した。
「別にそんな緊張しなくたって、お前はお前なりに祝ってやればいんだよ!」
なんだか今日の阿部は阿部じゃないみたいで、でも俺はその言葉におおきく頷いた。
「俺…栄口におめでとって言ってくる!!」
「はァ?今から!?お前、もうチャイムなるぞ……―――ま、いっか」
阿部の声を背中に、俺は教室を飛び出した。
世界で一番大きなおめでとう
(飛んでいくから)(今すぐに)