おお振り
□2
1ページ/1ページ
水谷なら、って
いつもどこか、そう思ってる自分がいた
6月7日の部活の帰り道。
今日の夜12時ピッタリに電話するかんね!
そう言って笑ってくれた水谷に、明日も朝練あるからダメってそういったのは俺なのに。
そんなこと言わなきゃ良かったって後悔してる自分がいる。
「俺、水谷のことなんだと思ってるんだろ…」
水谷なら、今日は早起きして(いつもは遅刻ギリギリに来る)俺に一番におめでとうって言ってくれるんじゃないかって、そんな想像して一人でニヤついていたなんてバカみたいだ。
自意識過剰になりすぎたのか、俺の喋ってもない心の内を水谷なら分かってくれているんじゃないかって一人過信してた。
分かるわけないのに。
昨日だって、あれでも12時に電話がかかってくるんじゃないかって、寝ずに待ってる自分がいた。
「俺の、バカ」
期待が大きい分落胆も大きいってよく言うけど、応えられるような期待じゃないそれをしていた俺がバカだっただけ。
「水谷の、バカ」
でも、もうちょっと考えて欲しかったな…俺のコト
自分でそんなことを思うのは恥ずかしいけど、最近水谷がよそよそしいから少し寂しかったり。
はぁ、と溜め息ひとつ。
「どうした?」
いきなり肩に手を置かれるもんだから、自分でも大げさだなって思うぐらい飛び上がってしまった。
「っ巣山…?」
「んな驚かなくても」
「あはは、ごめんごめん。ちょっとボーっとしてた」
「…まあ、別にいいけどな。で?」
「え?」
「何悩んでんだ?」
「へっ!?」
寄ってるぞ、皺。と、巣山はとんとんと自分の眉間を叩いた。
慌てて眉間に手をやって皺を伸ばしてると、巣山が笑ったのがわかった。
「…なんで笑うの」
「悪い悪い。あのさ、ちょっとお前廊下見てみろ」
巣山が指をさす方向に自然と顔がついていく。
「…水谷!?」
なんで、つか、もうチャイム鳴るんじゃ…
ぐるぐると、頭の中でいろんなものが回ってて、でも確かに言えるのは今の俺の顔が赤いってことと、心臓がバクバクなってるってこと。
「行ってやれ」
とん、と背中を押されて、俺は水谷のほうへ駆け寄った。
やっぱり君が会いに来てくれるだけで嬉しいかもしれない
(俺の心の中)(分かるの?)