おお振り

□叫んだ声は言葉にすらならず
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「ちーす、花井〜来たよ〜!!」


「わーっ!!栄口ぃ!!」




ガラガラとドアを開け栄口が花井に挨拶をすると、即座に水谷が栄口の前に立ち塞がった。



「よす、栄口。わざわざワリィな」



そんなお邪魔虫水谷を意にも解さない花井は慣れてしまったのか技なのか…




「ううん、いーよ。なーんか阿部いないと静かだねぇ」


「うんうん、うるさいのがいなくてセーセーしてるよ」


「煩いのはお前だろ」

べしっと花井に叩かれた水谷はアイテッっと頭を押さえながらも嬉しそうだ。




「あはは、確かに」


「栄口までっ?!ヒドイ!!」


「水谷いじりはここまでにしといて会議だ会議」


「そうだね」






そう、栄口がわざわざこの離れたクラスまで来たのは会議のためであった。
昼休憩中なので弁当持参で栄口と花井が向き合い、横に水谷が引っ付くという席になっている。



「…で、阿部の風邪はいつ治りそうなの?」


「明日には全快しそうだってよ。まぁ、ただの強がりかもしんねーけど」



今回の会議は副主将でありキャッチャーである阿部隆也が風邪をひいてしまった為、三橋のメニューをどうするかという内容だ。
ふいに、水谷が思い出したように栄口に目配せをした。



「いやー、でもさー栄口。あのことわざはウソだったんだね」


「?」


「ほら、えーっと…あ、バカは風邪をひかないってやつ!」




そうだねなんて曖昧に笑っている栄口とどこが可笑しいのかは分からないがゲラゲラと笑っている水谷に、花井は頭が痛くなってしまった。


いつもなら阿部のチョップやウメボシが水谷に炸裂しているのだが、それがないせいか水谷の茶々がいつもの倍になり会議がなかなか進まない。








「あー、ゴホン」







2人が気付かないかとわざとらしく咳払いをしている花井の姿がなんとも痛々しく見える。
しかし水谷のバカは天性らしい。






「あれ…?花井も風邪?」







「(―――……空気読めっッ!!)」






血の涙を流しながら花井は努力(?)が報われないのか、と嘆いた。

しかし、そこは副主将に推薦されただけのことがある栄口勇人。
キョトンと首を傾げる水谷と、そんな彼をみて花井の言いたいことを即座に汲み取った。






「…あー、花井。屋上行く?」




「お、おう…」




栄口の気の利いた言葉に花井がホッとする束の間。




「えっ!俺も行く!!」




どこまでも引っ付いてくる水谷を拒絶できない2人であった――――













「「((阿部!!はやく戻ってこいーっ!!!!))」」












叫んだ声は言葉にすらならず
(なーんか水谷には)(本気で怒れないんだよな)














お題配布元:愛死哀対
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