デュラ小説

□誰が最強?
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「うっうっ…」


「正臣いつまで泣いてるの?」


いい加減うざいよ、という帝人の口調も心なしかいつもより優しげだ。


先日、ラブレターを貰って大喜びしていたが、送り主は静雄でありその手紙は実は歌詞だったというダブルパンチが正臣のハートを直撃したのだった。



あの後静雄は急に泣き出した正臣にオロオロしながら謝り、それでめでたしめでたし――――



だったところを臨也が「正臣くんって泣き顔もそそるよね」と熱いキッスをぶちかましてしまい、現在に至る。



「だって、だって、あの野郎のせいで俺の…俺の…」


言いよどんで正臣はまた机に突っ伏した。


もう俺お婿に行けない、だの今日部活行きたくない、だのをぐずりながら言う正臣の背中をぽんぽんと撫でながら帝人は溜め息をついた。


「でも正臣、また泣いてたら臨也さんの思う壺だよ?あれ、そんなにキスして欲しいのとか言ってまたされちゃうよ?」


「げ…っ。そうか…」



ケロリとした顔でうげーと言っている正臣。


「…嘘泣き?」


「えー、だって泣いたら帝人が優しくしてくれるだろ?」
きょとんとした顔に何も言い返せない帝人。
これが惚れた弱みというやつなのかと帝人は頭が痛くなった。




「でさ、さっきから俺の…までしか言ってないけど結局俺の何がどうしたの?」


「帝人…。俺にそれを言わす気か。文脈で察してくれるっていうのが親友だろ?」


「そんなのいくら園原さんでも分からないよ」


「えっ、杏里?俺は帝人クン、君に言ったんだけどなー。それに杏里は親友じゃなくて、俺のハ・ニ・ー痛いっ!叩くなよ帝人ぉ!」


ぺしぺしと正臣の頭を叩く帝人の背後にぬっと影が現れた。


「私、分かりましたけど…」



「えっ、嘘でしょ園原さん?!というかいつから…」


「くそっ、杏里に気がつかないなんて俺もまだまだだ…」



ええと、丁度俺の…のところあたりでしょうか、と言う杏里の表情は読めない。

もしかしたら園原さんって最強?といまさらなことを帝人は胸の奥で考えた。







「えっと、俺のファーストキスが奪われた………っていう感じですよね」




「頬を微かに染めて髪をかきあげる杏里はとても可愛いのだがそうじゃなくてっ!な、なんで分かったんだ?」


正臣が混乱して変なことを言っているが、帝人は杏里に先を促した。



「なんとなく分かりました」
この一言で正臣と帝人の中に杏里最強伝説が書き加えられることとなった。











誰が最強?

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