おお振り
□世界樹パロ
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“世界樹”
この国で生活するために欠かせない存在である。
そして人々から神木と崇められるこの巨木には、空飛ぶ城につながるという伝説がまことしやかに語り継がれてきた。
魔物や罠が持ちうける樹海は危険で満ち溢れている。
それでも、空飛ぶ城にたどり着くべく、様々な人々が頂点を目指している。
これからの物語の主人公である彼らも、その一人である。
第一話 仲間
「ん?ここかな」
“金の棘魚亭”
そう綴られた看板の前で水谷は足を止めた。
彼は歌と踊りで味方を鼓舞する吟遊詩人、バードである。
今日初めてこの国に訪れた彼はこれから始まるだろう冒険に胸を高鳴らせ、しかし流石に一人で樹海に行くのは危険だろうと仲間探しをしていたところだった。
仲間探しをするならば酒場…と、水谷は考えたのだが、彼はとても頭が弱かった。
「きんの…。なんて読むんだろ、これ?とげ?」
「きょくぎょてい、だよ」
突然背後からした声に水谷はぎょっとし振り向くと、そこには緑の帽子をかぶった大きな瞳の優しそうな青少年が立っていた。
「ちわ!俺、ここ来たの初めてなんだ。冒険とかすんのも初めてで…。仲間とかって、どこ行ったら出来んのかな」
「あ、お、俺!水谷文貴っていうんだけど…。よ、良かったら仲間になんない?!」
「へ…?」
質問をしたつもりだったが、いきなり仲間にならないかと言われて栄口はポカンとした。
「め、めーわく、だった…?ごめん、俺もこの国初めてでさ、仲間が出来たのちょっと嬉しくて」
知らない国に一人。お互い同じ状況で心細かったのか、2人はすぐに意気投合した。
「俺は栄口勇人。えっと、レンジャーって分かる?サポートスキル中心の狩人みたいなかんじ…」
「へぇ、そうなんだ!俺はね、バードなの」
「格好そんな感じだもんねー。あ、これ楽器?触っていい?」
一人が心細くて眠れなかった夜も、仲間がいればこんなに楽しいのかと水谷は感嘆した。
「俺、栄口と会えてよかった。一人だとホント怖いし、寂しいしー。どうにかなるかと思っちゃったよー」
「うん、俺も。水谷と会えてよかった」
そうやって2人、にっこり笑いあう。
「俺たちの出会いに、かんぱーい!」
「なんだよ、俺ら恋人かよ」
笑いながらもグラスを合わせてくれる栄口に水谷は嬉しくなりながらはしゃいだのだった。
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