DetectiveConan
□怪盗の悩みゴト。
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毎回、予告通りに現れお目当ての秘宝を可憐に盗む(うばう)。
それが怪盗キッド。
だか、怪盗にだって盗め(うばえ)ないものはある。
いくら万能で凄い怪盗でも滅多に出来ないだろう。
そんなわけで今回も可憐に秘宝を盗んだ(奪った)わけだが、唐突に後ろから声がかけられて振り返った。
「おい‥‥キッド‥‥‥」
その声の主は小さな名探偵‥‥‥ではなく元の体を取り戻した高校生探偵、工藤新一。
「おや、これはこれは‥‥名探偵。よく此処にいることが分かりましたね。」
「まぁな。逃げるとしたらパフォーマンスの為にもこっから逃げるだろうと思ってな。」
名探偵はニヤッと笑う。
そう、此処は人々が沢山集まって見える屋上。
「中森警部たちが血眼になって探してるぜ?紳士気取りの怪盗さんよぉ」
「まぁ、そうでしょうね。それでどのようなご用件で?」
ニコッて笑って言葉を続ける。
「嗚呼、それに関してだけどな」
「?」
「なぁ、なんでそんなに寂しそうなんだ?」
「はぃ?」
「いや、いつからかお前見てて思うようになったんだけどさ‥‥‥お前の笑顔は仮面をはりつけただけの愛想笑いみたいで‥‥‥‥俺と目が合うと哀しそうな寂しそうな目で笑うからさ‥‥‥‥」
一瞬、耳を疑った。
ポーカーフェイスが出来ていなくなってるとは‥‥‥自分はそんな風に笑っていたのかと思った。
それはいつからだったんだと苦笑した。
「そんな風に貴方には見えたんですか?」
「‥‥‥‥俺にはな。」
「貴方はいろいろと分かってしまう能力でもお持ちとか?」
クスクスと笑って彼に問うてみるとあからさまに「は?」という顔をされた。
「で、だな、お前に聞きたかったんだけどよ‥‥‥簡単には答えてくれねぇだろ?」
ニヤリと笑うその顔はとても綺麗だ。
「ではこういうことにしといて下さい。」
「何を?」
「盗み(奪いたく)ても出来ないものがあるということですよ。」
「嘘つけ!お前ぇに盗めねぇもんは無ぇだろうが。」
言ったことに対して不適な笑顔で返してきた彼は魅力的で‥‥‥
嘘に聞こえるような俺の言った言葉は本音。
貴方はいつか俺に奪われてくれますか?
「では名探偵、またの機会にお逢いしましょう。」
そんなことを思いながら彼に恭しくお辞儀をし、最後に微笑を向けて屋上から降り立った。
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