rainy rainy

□其ノ拾壱。
1ページ/1ページ

 雨。
 川。
 本質は同一である水の、其の前者と深い縁を持ち、二人は死んだ。
 少女は、尽きる前に何かを伝えようとした。
 音にはならず、其の言葉は紡がれずとも、少年には伝わった。
 再び、彼は泣く。
 そして――。
 少女は、水に還された。


 一人残された楓は、少女のいる川を眺めた。予想以上に水位は増しており、雨で濁ったせいもあり、其の姿はもう見えない。
 彼は、自身もそう経たない内に死んでしまうことはわかっていた。
 背から抜いたナイフは、何処かに消えた。川に流されてしまったのだろうか……。
 しかし、そんなことはどうでもよかった。いや、もはや全てがどうでもいい。自棄なのか……いや、もう終わりが見えているからかもしれない。
 少年は地を這い、川に其の身を投げる。
 温い水に包まれて、ゆっくりと沈む身体。苦痛はなく、と云うより、感覚自体が失せていた。
 穏やかな表情の少女が、眠っている。
 少年は、静かに目を閉じた。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ