◆ファンタジー
□野外実習2日目B
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2日目の夜を迎えようとしていた。
前日と同様、分担してテントを張り夕食作りをする。
食料を持たせる為に、森に自生している食べれる木の実や野草なども食したが、昨日よりはかなり質素な食事になった。
夕食後に簡単なミーティングをし、明日に備えて早めに寝ることにした。
美咲と碓氷は川原まで歩いてきた。
昨日の約束通り、今日も稽古をしに。
しかしなぁ…
あの約束が頭を過ぎる。
碓氷を見れば、余裕綽々の顔をしているのがまた癪に障る。
くっそ…
今日こそはコイツに絶対勝ってやる…っ!!
「ミサちゃんてば、そんな熱い視線で俺を見ないでよ。俺を焼き殺す気?」
「あぁ…、視線で人が殺せたらどんなに楽かと思ったよ。」
「恐っ」
言葉とは裏腹に、笑いながら私の頭をくしゃっと撫でる。
「ふんっ。今から戦う敵に、易々と触れるな。」
手を払いのけ、一人でズンズン先に進んだ。
「ここで良いか…。今夜も月が綺麗だな。」
「うん…。でも昨日の場所より少し暗いかな。ちょっと魔法を使うね。」
「ん?あぁ、それは構わないが…。私が火を点ける方が早いか?」
「いや、火は森の眠りを妨げるから…。川の水にちょっと力を借りるよ。」
碓氷は川に近付き、川面に手をかざしながら呪文を唱えた。
『水よ………月の明かりを己の内に閉じ込めよ』
…川面が光り輝き始める。
でもそれは目に痛い光ではなく、ぼんやりと辺りを照らしてくれる暖かな光。
まるで蛍の群がいるかのようなのようだった。
「綺麗だな…。こんな魔法の使い方もあるのか。」
「月があって川があるからね。野外ならではの魔法でしょ。」
明るくするには火を燈すことしか考えてなかった。…コイツといると勉強になるな。
「じゃ、始めよっか。」
「そうだな。…覚悟しろ。」
ミサちゃんてば、こわ〜い。とか言ってる隙に、一気に間合いを詰める。
ガキィン…ッッッ!!
お互い、鞘から剣を出すか出さないかの内に剣がぶつかりあった。
「チッ…」
「ミサちゃん…、最初から本気だね?」
「私が気を抜く訳無いだろうがっ!」
「そっか…。うん、じゃあ…行くよ…っ」
激しい攻防戦が繰り広げられる。
例えこの場に仲間がいても、二人のレベルが高すぎて目が追いつかない程のスピードだった。
「あっ…。」
碓氷が運悪く、小石を踏んでしまいバランスを崩した。
「…!!」
美咲はその隙を逃さず、碓氷に渾身の一撃を喰らわす。
碓氷はその一撃は受け止めたものの、衝撃を受け止めきれずにそのまま倒れてしまった。
美咲もその勢いのまま碓氷の上に乗りかかり首元に剣を突き付けようとしたが、碓氷に剣の柄ごと手首を掴まれてしまった。
押しても引いてもビクともしない。
形勢はこちらが悪い…とは言えないが、良くも無い。
暫し、至近距離での攻防が始まった………