◇イベント
□生まれてきてくれたこと
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君が生まれてきてくれたこと
君と出会えたこと
君と一緒にいれること
全てのことに、感謝を―…
「鮎沢、誕生日プレゼントは何が欲しい?」
放課後の生徒会室。
他の生徒会役員は全員帰宅し、残るのは会長である美咲と生徒会役員ではない碓氷の二人。
美咲は書類から顔を外し、目の前で自分を見下ろしている碓氷を一瞥した。
しかしその目線はすぐまた書類に戻る。
「…何もいらん。」
そのまま淡々と書類に目を通していく。
たまにチェックするペンの音が聞こえてくるだけで、生徒会室は静かだった。
碓氷は仕事をしてこっちを向いてくれない美咲をみて溜息を吐く。
どうしたものか…と考えていたら、意外にも美咲から声を掛けてくれた。
「…カレーライス。」
「え?」
「お前の作ったカレーライスが食べたい。これが私の欲しい物だ。分かったな?
じゃあ帰宅時間になったし帰るぞ!」
美咲は書類の束を自分の鞄の中に入れ、さっさと生徒会室から出て行く。
碓氷も慌てて美咲を追った。
「待ってよ、鮎沢。それって明日の夜は俺の家に来てくれるってこと?」
「う、上手いカレーを食わせろよ!」
「うん…。」
碓氷が顔を綻ばせる。
その笑顔を見て、美咲の顔が赤くなった。
明日が楽しみだ―…
二人の思いは一つだった。