★過去拍手お礼文

□2010.08.10〜2010.10.04
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≪碓氷拓海視線≫


まだ小さかった頃、精霊達の声が聞こえた。……気がする。

微かにだけど。何を喋っているのか分からなかったけど。


でも…


楽しかった。嬉しかった。一人じゃないと感じられたから。

精霊達の声を聞いてることが、自分が生きているんだと感じられた。








森の中にある川のせせらぎに足を浸す。

冷たくて気持ちいい……。

森の中は鳥の声・虫の声・獣の声・木々の声・風の声等々、上げれば切りがない程の“声”が聞こえてくる。
でも、精霊達の声は聞こえない。
少し寂しい気もするけど、でも一番自分にとって心地良い声は…。

「碓氷?」

そう俺を呼ぶ声が、隣から聞こえる。
俺を上目遣いで見上げながら、首を傾げる。

可愛いなぁ、もう…。

「どうしたんだ?」
「いや、なんでもないよ。」

鮎沢の頭をクシャっと撫でた。

「なっ、何するんだ!」
「怒っちゃだめだよー。せっかく体冷やしてるのに。」
「あ、あぁ…。」

鮎沢は大人しくまた足を川に浸した。

「それにしても、火の精霊の術者はこういう時厄介だね。体温が上がってくると魔法を使う気がなくても発火しちゃうなんて。下手すれば森林火災になっちゃうし。」
「まだまだ私が未熟って事だな。」

川でサブサブ足を揺らして水を跳ねさせている。
子供っぽい仕草も、普段の鮎沢では考えられない行動で可愛く見えた。

「じゃあさ、やっぱり…。」
「ん?」
「俺とミサちゃんはずぅ〜〜〜っと一緒にいないといけないね。」
「はぁっ!?何でそうなるんだ!?」
折角冷えた体の熱が、また急上昇で上がっていく。
「だって、俺水の精霊の使い手だもん。ミサちゃんが熱暴走しそうになったら、俺の魔法で冷ましてあげる。」
言いながら逃げられないように鮎沢の手を掴み、自分に引き寄せた。
「覚悟してね。」
チュッ…とリップ音を響かせながら、手の甲にキスをした。
「な、な、なななっ………!?」
顔を真っ赤にさせ、ワナワナと震えている。
そんな姿も可愛いんだけど…。本当、勘弁してよ…。
掴んでた手をそのままギュッと握り、片方は鮎沢の頬に手を当てる。
「ほら、また顔熱くして…。『冷めろ〜サメロ〜サメロ〜』」
水の精霊に呼びかけて、鮎沢の熱を取っていった。
「そんな呪文って有りなのかよ…。」
鮎沢の顔が赤いのが少しずつ引いていった。
魔法を使っているので俺の手も少し冷たいんだろう。鮎沢はおとなしく触られている。
「…碓氷の手、冷たくて気持ちいいな。」
俺の手に自分の手をそっと添えて、目を瞑りながらそんな事を言う。
…このまま押し倒しちゃいそうなんですけど。まったく無防備なんだから…。

理性を総動員させて、なんとか耐える。
今はまだ……ね。

ギュッと握っていた手を解き、再度指を絡ませて繋ぐ。
頬に当てていた手を顎へと滑らし、クイッと持ち上げる。
鮎沢が目を開いたが、文句の言葉は出てこない。
それを了承の合図と受け取って、俺は鮎沢にキスをした。
ゆっくりと唇の感触を味わう。
とろけそうな感覚に陥りそうなほど、甘い甘い味がした。
離れてはくっつき、くっついては離れを繰り返し鮎沢の唇が濡れる。
それがまたいやらしくて…。
俺は鮎沢をぎゅっと抱きしめた。
鮎沢も俺の背中に手を回し、抱きしめ返してくれる。
そしてどちらかともなく離れ、またキスをする。






鮎沢の周りにいる火の精霊達に負けないくらい、俺を側にいさせて。

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