▲present

□Lady's Mantle 上
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ここは星華魔法学園。

名前通り、この学園の生徒達はここで魔法を学ぶ。しかしそれだけに留まらず、様々な武器の扱いも学び、自分に合った武器と魔法、双方を駆使する。
例えば碓氷は双剣、美咲は日本刀によく似た細身の剣といったように。


星華は共学になってまだ数年。ほとんどが男子生徒で構成されているこの学園で、美咲は女子では初の生徒会長を務めていた。



そして美咲は今、『言霊と呪文詠昌学』という選択授業を受けているのだが・・・・。


授業内容そのものが自明の理とばかりに、全くノートを取らずにいる隣の変態宇宙人が、美咲の集中力を苛立ちという形で途切れさせていた。


以前美咲が「真面目に聞かないなら何でこの授業とったんだよ!」と聞いたら(叱責したら)、「鮎沢がとってるからv」とムカつくほど爽やかな笑顔で返され、今もこの状況は続行している。


――全く、私がとってるからって自分までとる必要がどこにあるんだ・・・?


まさか私と対抗しようとして・・?――いや、執着心のないコイツが成績や順位になんかこだわるわけないしな・・。


はあ、と美咲は頬杖をつきながら嘆息を洩らして、再びノートを取り始める。


「――いい?英語の『enchant=魅了する、魔法をかける』という言葉は、そもそもラテン語の『incantare』に由来していて、『en―中に』と『chant―歌う』で『歌って心の中に呪文をかける』が本来の意味になるの。


言霊の宿るこの言葉を、まず言葉の精霊への呼びかけの合図に使います。そして魔法の発動方法だけど、『enchant』を用いる場合は、その本来の意味通り、歌うことで魔法が使えるの。

教科書が例として載せている既存の歌だけでも、様々なタイプの魔法が使用できちゃうのよ。


何故かと言えば、言霊の魔法は、魔力を持つ者ならば、それぞれに宿る精霊の性質を問わず使うことができる、マルチな魔法だからなの。


つまり火の精霊を宿す者が水の魔法を使うこともできるってことよ。だけど精霊の性質が異なる場合は、当然のことながら、その力は微力になるわ。

あくまで広く浅く応用させるために学ぶ魔法であることを覚えていてね。」


このクラスの担任――宮園先生がにっこり笑ってそう言うと、男子達のほとんどが、まるで良い子の見本のような感じで「はーい」と元気よく返事した。


「じゃあ、試しに誰かにやって貰おうかしら・・・碓氷君、やってみてくれる?」


碓氷は「はい」と短く返事をすると、おもむろに立ち上がった。全く授業を聞いてなさそうだったのに出来るのか?と、美咲は懸念の色を隠し切れず、首を傾げる。



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