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□きつねの恩返し? 前編
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――― ミサキ ―――
自分の名前を呼ばれたような気がしたので後ろを振り向く。
だが、そこには誰もいない。
空耳だったのか…?
前を向き直して歩き出そうとした所で、また声が聞こえた。
『 …ミサキ』
今度は確かに耳に届いた。
再度後ろを振り向く。
すぐ後ろ、自分の目線の高さには誰もいない。
フと足元に視線を下ろしたら、そこに小さい動物がいた。
子狐…?
まさかこの子狐が喋ったとか…。まさか、な。
「どうしたんだ?迷子か。」
膝を曲げて、子狐と目線を合わせる。
子狐は首を傾げながら、美咲のことをじっと見つめていた。
人を恐れて逃げないな…。
そっと右手を差し出すと、その子狐は美咲の手の匂いを嗅ぎ、ペロと一舐めした。
そのままその子狐は、美咲の腕の中に飛び込んでくる。
「うわっ!っと。人懐っこい子だなぁ。」
美咲は慌てて子狐を抱きかかえ、子狐を撫でる。毛がフサフサしていて柔らかい。
『…この子狐をこのまま置いていくわけにも行かないし、取り敢えず生徒会で保護しよう』
美咲は子狐を抱いたまま、生徒会室へと歩き出した。
―― ミサキ、探していたんだ……会いたかった ――
風に乗ってそんな声が聞こえたような気がした。