創作

□覇王のキラ星*prelude
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 自称・ライバルという者ほど厄介な人間はいない。ジーク・イディズンは改めて強く思いなおした。



「と、いうわけだ。よろしく頼むぞジーク!」
「断る」

 目の前に浮かぶ鏡に向かい、逡巡せずに言い放つ。
 荒野に吹き荒ぶ風に攫われることなく空中に浮かび続ける鏡には、眼鏡をかけた男が映っていた。

 眼鏡の男は濃紺のローブを纏った典型的な魔導師姿をしている。
 ジークの拒否を意に介することなく、鏡の人物は一方的に言葉を続けた。

「名前はリュウ。リュウ・シファーナ。好きな食べ物は燻製チキンのサンドイッチだ。身体は丈夫だが、あまり無理させないようにな!」
「そんな情報いらねえし、引き受けるとも言っていない」

 ジークは苛立たしげに眉を寄せる。
 腰に手を当てて、話は終わりだとばかりに鏡に背を向けた。その所作で、腰まで届く赤黒い髪が背中で揺れる。

「む?お前また髪が傷んでいないか?栄養はちゃんと摂っているか?俺との勝負のために万全な態勢を常に維持しておけよ」
「てめえは俺の母親か?相変わらずうざってえ奴だなホント」

 マイペースに喋り続ける眼鏡に、ジークはウンザリとした顔で振り向いた。

「てめえの指示に従う義務もなければ気分もない。とっとと消えろ、レイン・ガレイン」

 威圧の意を込めて鏡の人物、レインを睨みつける。

 しかし、レインは気圧されることなく腕を組んで頷いた。
 頭の動きに合わせて、銀の混じる青い髪が揺れる。項が隠れる程度に伸びた髪は、ジークのそれと違ってクセはなく、艶があった。

「やはり健康管理は大切だ。お前は一人だと無謀な事でも平気でするからな。誰かが一緒にいた方が健康で文化的な生活が送れるだろう」
「余計なお世話だ。俺自身のことは俺が好きにやる。誰に文句を言われる筋合いもない」

 撥ねつける態度を見せつけてもレインが折れる気配はなく、そのまま彼のペースで話は進められていった。

「とりあえず1カ月だ。次の実力考査までに能力開花の手助けを頼む。なに、お前ならきっとやれるさ!なんたって俺のライバルだからな!」
「自信がねえから拒否ってるんじゃねえ!教師の真似事なんざお断りなんだよ!」

 ついに吠えたジークだが、相手も慣れたもので、諌める言葉すら発せず話の結びに入る。

「リュウの力は俺よりお前に近い。ライバルのためだ、よろしく頼んだぞジーク!」

 では!と片手を掲げたかと思うと、鏡からレインの姿が消えた。
 「てめえ!」とジークが鏡を鷲掴んだ瞬間、鏡から強烈な光が放たれた。

 閃光は一瞬のうちにジークの周囲を取り囲み、光の球を形成する。
 見る間に球は身長の2倍ほどに膨れ上がり、そして僅かに収縮した後、パチンと弾けて消えた。




 ―――光が消えた後、鏡が浮いていた場所には一人の人間が佇んでいた。



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