創作
□あおぞら六重奏〜花が3つ集まって〜
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肩まで伸びた艶やかな黒髪の女生徒は、向かい合う男子生徒を見上げ、頬を赤らめたまま口を開いた。
「私と一緒に・・・山籠り、してくれますか?」
「―――で、また?」
「うん・・・まただった」
呆れたように溜息をつく恵子へ、朋絵は苦笑を返した。
「なんでかなー・・・」
2人の前では静弥がお箸を咥えながら首を捻っている。
「告白OKの条件を『山籠り』にすると、なんでみんな諦めちゃうかな・・・」
心底理解できないと唸る静弥に、恵子は項垂れた。
「そりゃ・・・大抵は、ねえ・・・」
昼休み、校舎裏のいつもの場所で女子3人は昼食をとっていた。
男子3人はそれぞれ用事があったため欠席している。
珍しく女子のみの昼食会で出た話題が、朋絵の告白話だった。
長い黒髪に整った容貌、常に姿勢が良いことから、朋絵は『清楚なお嬢様』といった印象を持たれすい。
そのため、朋絵は愛の告白をされることも多く、中学時代は誰もが知るマドンナ的存在だった。
高校に入学したばかりだが、早速心を奪われた男子生徒が現れたらしい。
呼び出しを受けて、昼食前に朋絵は見知らぬ男子生徒と対峙してきた。
緊張気味に告白した男子生徒に対して朋絵がした返事というのが、冒頭の文句だった。
武術家である親の影響を受け、彼女も長期休みにはよく山へ修行に行く。
そのため、「恋人にするならそれに付き合ってくれる人がいい」というのが、朋絵の譲れない条件だった。
『清楚なお嬢様』という幻想を抱いて告白した男子にとって、『山籠り』という不意打ちは、存外ダメージが大きいようだ。
反応はそれぞれだが、大抵がそこで朋絵との交際を諦める。