版権2

□夢見る地へと続く道
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 きらきら、きらり。橙色の光に満ちて、青い世界をぐるりと回る。
 大きな流れは止められたけれど、二千年の名残はまだまだ巡る。
 きらきら、きらりと光が巡る。青い世界をぐるぐる回る。

 光に潜って、炎を浴びて。水に飛び込み、風に吹かれて。地面を突きぬけ、闇の奥へと。
 青い世界をきらきら巡る。

 なんだろう。六つの衣を通した先の、青い世界に焔があった。あれを自分は知っている。
 火の粉のようにきらきらと、真紅の焔から光が零れた。焔と同じ紅ではないが、橙とも違う色。

 真っ暗闇から転げ落ち、ぽーんと地面に跳ねかえる。そのままふわりと風に乗り、水の中へと運ばれた。すると今度は炎に呑まれ、眩い光に包まれる。

 次から次へと舞い上がり橙色で転がるそれは、我はお前と囁く声も、ころりと撥ね退け否定する。自分だけの意識を集め、ころりと転がる塊へ。
 目指すは遥か、白い花咲くあの丘で。

 光の先へ、炎を越えて。水をかいて、風に向かって。地面を掘って、闇を突破し。

 ころころ、ころころ転がるそれを、抱いてもがくは夢の中。掴みたい光を掴めたら、そしたらきっとかえるから。

 闇の奥から飛び出して、地面でごろりと転がった。すると風がさらりと撫でて、水の方へと誘いをかける。そのまま進めば炎を被り、目を焼く光に覆われた。

 かえるんだ。

 きらきら、きらきら輝く光が、真紅の焔から舞い上がる。それを集めてかえるから。きっと、だから、待っていて。

 約束だ。君の涙を拭ってみせる。



夢見る地へと続く道




 ずうっと先まで続いている。
 こちらへ来いと誘いをかけているのだろうか。紅い糸が俺を導く。

 橙の塊を伴って、橙の膜を捲くって進む。
 一枚一枚捲る度、膜に映る映像はどんどんずれを生じていく。
 最初に見た映像にはティア、ガイ、ナタリア、イオン、アニス、ジェイド、アッシュの六人が映っていた。けれど先程こえた膜にはミュウもいて、ひったくりに攫われる事もなくなっていた。

 些細な違いが重なって、どんどん大きく異なっていく。無限に広がる選択肢により、弾き出される結果は一つでは無い。
 同じ展開だけをずっと見続けていれば、考えられる結果も一つだけだろう。でも、実際はそうじゃない。
 一つ一つの差異は小さくとも、積み重なればまるで違う姿を示す。
 ほら、今通った膜には六人と一匹の他に、円熟した技師が三人映っていた。

 過去も未来も無数にある。可能性は一つじゃない。

 糸はどんどん色味を増して、橙から紅へと近づく。
 なんだか、自分が釣りの獲物になった気分がする。それならば釣りの主はいったい誰だと、橙の膜の向こうへ目を眇める。

 こちらへ来いと俺の意識に働きかける糸の先には、真紅の焔が揺らめいていた。
 記憶の欠片をよって作った糸を垂らし、戻って来いと訴えかけてくる。

 ・・・記憶の欠片?
 どうしてそんな言葉が思い浮かんだのか。はて、と首を傾げると、傍らの塊がゆるりと震えた。

「私であって、私でない者よ」

 橙の塊はゆっくりと続ける。

「お前は私ではないと訴える・・・私と共に漂うも、より己の存在を確かめる・・・私に帰結するかと思えば、いしを抱いて立ちかえる・・・」

 そう言われ、自身の身体が消えかけた時を思い出す。
 もう手も足も目も耳も口も何もかもがなくなりかけたその時、最後に感じたのは黒褐色の石だった。

 罪を想起させるものでもあり、悪夢からの解放を促してくれたものでもある。
 ただの石に対して複雑な心情を抱くのはなぜか。そう思えばより鮮明に記憶が蘇る。

 俺は誰だ。俺はどうしてここにいて、何をしたいと望むのか。その答えを知っている自分を思い出す。
 そうだ、俺は俺だ。
 ただの意識集合体じゃない。俺は、ルーク・フォン・ファブレだ。

 よく言ったとばかりに糸が俺を引っ張る力を強める。
 戻って来いと手招く意図につれられて、かえりたいと願う意思が呼応する。

「瞳を開ければ、夢から覚める・・・」

 そうだな。でも、まだ、俺は


 
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