創作

□御伽噺異伝
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 どんぶらこっこ、どんぶらこっこ。

 川で洗濯中のおばあさんの前に、大きな桃が流れてきた。
 けれどおばあさんは気付いていないのか、桃は引き止められる事なく川下へと流される。

 水量豊かな川は桃を乗せ、ついには外洋にまで運んでしまった。
 桃は潮に乗ってどんぶらこ。海鳥だけが眺めている。


 そうしてある時、桃は島に辿り着く。
 鋭い岩肌が目立つ波打ち際で、桃は波に煽られ揺れていた。

 そこへ一つの影が現れる。

 上手い具合に引っ掛かっているその桃を拾い上げ、影はいそいそと仲間の下へ持ち帰った。

 大きな桃を見て、仲間達は銘々歓声を上げた。
 早速食べてみようと、包丁を桃の頂点から差し入れる。
 堅い種の存在に配慮して、柔らかな果肉をゆるゆると切っていった。

 するとどういう事か、桃の中ほどでふと、手応えがなくなった。

 そろそろ種に当たるかと思っていたら、そこには意外にも空洞が広がっているらしい。
 仲間達と首を捻り、空洞を避けるよう、より慎重に桃に刃を滑らせた。

 底辺に達したところで包丁を置く。
 さあいよいよと、意を決して左右へ割り開けば、同時に中から何かが飛び出した。

 驚く面々の前で、飛び出た物体は大きな音を発する。

「おぎゃあ」

 赤ん坊だ。
 ぷくぷくの肌をした、元気な人間の赤ん坊だった。
 理解不能な言葉を呟き、円らな瞳で周囲を取り囲む顔を見上げている。

 状況を誰も把握できずに奇妙な空気が漂う。

 しかしそんな中、注目の的である赤子はにこりと笑った。
 そして意味不明に手足をばたばたと動かす。

 その様子に緊張は解れ、途惑いの唸りはいつしか笑い声に変っていた。

 大きな桃の中から人間の赤ん坊が生まれた。
 誰もが予想しなかった出来事は島中に広まり、赤ん坊は一躍話題の人となる。

 人間だけれど、面白いから育ててみようか。
 誰からともなく話が運び、赤ん坊は島中の鬼から可愛がられた。


 後に桃太郎と名付けられたその赤ん坊は、鬼達が住む鬼が島に漂着していたのだった。
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