創作

□あおぞら六重奏〜昼食まであと少し〜
1ページ/3ページ


人気の少ない廊下を、二人の男子生徒が並んで進んで行く。

「あ、見えた。『社会科資料室』」
「ん」

笑顔の男子の視線を追って、隣りの男子が頷いた。


彼らは現在、社会科係の仕事を遂行中である。
4時間目の世界史の授業にて、教師が利用した世界地図と地球儀を、元あった場所へ戻す使命を与えられたのだ。

「先ずは世界を把握しよう!」という教師が使用した地図は黒板の7割を覆うほど大きく、キツく丸めてやっと抱えられるほどだった。
けして小柄ではない祥生も、両腕に抱えたそれを途中で何度か抱え直している。

「最初から気合い入っていたね、あの先生」
「ああ」
「この分だと、意外と大変かも社会科係」
「だな」

先程の授業内容を思い出し、無表情の男子は小さく相槌をうった。

「まあでも、京太郎と一緒なら全然苦じゃないけどね」
「そうか」
「そこで『俺もさ祥生!』とは言ってくれないの?」
「静弥や勝太じゃないからな、俺は…」

祥生の軽口に、京太郎は溜め息で返す。
両手で持っている地球儀が、からりと回った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ