創作

□あおぞら六重奏〜みんなで食べれば怖くない〜
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「あ!キョータ、ヨッシー!おっつかれ〜」
「ちょっと静弥!ご飯粒飛ぶから、お箸は置きなさいってば」

 校舎から男子生徒2人が姿を現すと、気付いた静弥は大きく手を振った。
 右側に座っていた恵子はその仕草を窘める。

「や。よかった、先に食べてたんだね」

 常ににこにことした表情を保つ祥生が静弥に応える。祥生の隣を歩く京太郎も、小さく頷きを返した。

 そんな2人を迎え、先に円形に坐していた4人は少しずつ場所を詰めてスペースをあける。恵子と静弥の間にできた空間に、祥生と京太郎が腰を下ろした。

「祥生ちゃんも京太郎ちゃんも、お疲れ様」
「おっつー!」

 対面に座っている朋絵と勝太も、それぞれ2人に声をかける。

 校舎の裏側の割に日当たりのいいこの場所は、隠れた昼食スポットだ。混み合う食堂や、時折ボールが飛んでくる中庭より、ずっと落ち着いて食事がとれる。

「な、な。2人は今日メシ何?メイン何?」
「俺のは煮物中心弁当」
「僕のは野菜炒め弁当だけど、勝太は?」
「俺?俺のは友情愛情弁当!」
「バカじゃないの!?」

 胸を張る勝太の頭を恵子が小突いた。アーモンド型の目を吊り上げ、不機嫌な声で解説を入れる。

「こいつ、今日お弁当もお財布も忘れたんだって!」
「だから私達のお弁当を勝太ちゃんにおすそ分けしたの」

 恵子の言葉を朋絵が笑顔で繋いだ。肩まで伸びた艶やかな黒髪に似合う、楚々とした微笑みだ。そんな朋絵に祥生も微笑み返す。

「なるほど。それなら確かに『友情愛情弁当』だね」
「あ、そっか。ボクらの友情と愛情が入り混じったカンパ弁当・・・なるほどだね勝っちゃん!」
「おう!なるほどだろ!」

 項が見えるほど短い髪の静弥はうんうんと納得し、勝太が得意そうに鼻を鳴らした。
 陽気な静弥と勝太、それを笑顔で眺める朋絵と祥生に、恵子は負けたような思いで溜息をついた。
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