創作

□あおぞら六重奏〜花が3つ集まって〜
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「一緒に来てくれた人もいるにはいるんだけど・・・」
「でもすぐギブアップしたんだっけ?」
「そうなの・・・初心者用の修行場を選んだのに・・・」

 朋絵は肩を落として溜息をついた。

 告白はされるばかりだが、そこから先の、お付き合いという過程まで進んだことは滅多にない。
 しかも、その稀な段階でさえ長続きしないのだ。

 彼女にとっては逆にフラれた気分になるため、告白話にはいい思い出が一つもない。

「みんなそんなに山が嫌いなのかしら・・・」

 悲しげに目を伏せる朋絵に、静弥は懸命に原因を探ろうとする。

「う〜ん・・・やっぱイマドキの子は都会が好きなのかねえ?」
「イマドキの子って、静弥、あんたね・・・」

 この場でただ一人、散っていった男子生徒の心情を理解できる恵子が深く息をはいた。

 朋絵の人柄を把握せず、勝手な理想を抱いた男子が自滅する様を、「自業自得」とバッサリ切る恵子ではある。

 が、少しばかりは同情の余地があると思っているのは内緒だ。
 哀れ、と心の中で合掌したこともある。

「・・・都会だったら来てくれるかな?」

 ふいに口元に手を当てて、朋絵は閃いたと言わんばかりに顔を喜色に染めた。

「都会でもできる修行はあるから、それだったら一緒にやってくれるかしら?」
「おお!ナイス朋ちん!それならみんなやるよ!」

 やらねーよ!

 思わずツッコミそうになり、恵子の手に力が込められる。
 お箸から異質な音が聞こえたのはきっと気のせいだ。

「そうかな?それならいいな」
「うんうん!いけるいける!むしろボクが行きたいもん!」
「本当?それじゃあ静弥ちゃん、今度一緒に行かない?」
「ホント!?行く行く!やったーー!」

 男子生徒に告白された時のシュミレーションはあっさり終り、今度は朋絵と静弥のデート計画が練られ始めた。

 女友達とのデートもいいけど、恋人と出かけることに対しても、もっと興味を持ってほしい。
 恵子もそれほど強い興味を持っているわけではないが、この2人は小学生、いや、幼稚園レベルだ。
 花の女子高生とあろう者が、なんとまあ。2人の保護者気分に浸りながら恵子は再び深く息をはいた。

「ま、でも・・・」

 昔と変わらないやり取りは、悪くない。
 実のところ、友情>恋愛のこの状況が恵子は気に入っている。

 思わず頬を緩めると、朋絵と静弥が明るい笑顔を湛えて恵子に向き直った。

「ね、ね!恵やんも一緒に行こうよ!」
「たまには女子3人だけでお出かけしてみよう?」
「はいはい。いいわよ。行きましょか」


 結局、恵子は恋人の必要性を感じないほど、この幼なじみ達が大好きなのだ。
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