創作

□あおぞら六重奏〜十人十色の青春だ〜
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「負けないからね!勝っちゃん!」
「望むところだぜ!静弥!」

 時は5月中旬の昼休み、場所は日が当たる校舎裏。
 水玉模様のピクニックシートの上にて、二人の男女が対峙する―――


「食事中は立たないっ!」
「はいっ!」


―――が、母親的女生徒の一喝により、二人の睨み合いはあっけなく終息した。



「どうしたの?三人とも」
「あっ朋ちん!」
「おっ朋絵。よっす!」

 そんなやり取りをしている3人の元へ、一人の女子がやって来た。
 朋絵と呼ばれたその女子の問いに、二人を叱り付けた女子、恵子が応える。

「体育祭に今から燃えているんだって」

 アーモンド型の目を瞑り、恵子は小さく溜め息をついた。

「ちょっと気が早いと思…」
「何言ってるのさ、恵やん!」
「そうだぞ恵子!あともう一か月じゃねえか!」
「ふふ。燃えているね、二人とも」

 再び立ち上がらんばかりに燃える二人を見て、朋絵は穏やかに微笑んだ。
 それは艶やかな黒髪と相俟って、清楚な美少女といった印象を見る者に与える。

「そうだ、朋ちん!どうだった?」

 朋絵が昼食に遅れてきた理由を思い出し、静弥は朋絵に向き直った。

「うん…また、だった」

 そう呟いて、朋絵は少し寂しそうに笑う。

「ドンマイドンマイ、朋絵!お前はいい女だ!」
「…ずれたフォローだし、あんたに誉められても嬉しくないし」
「ひでえ!」

 容赦ない恵子の言葉に、勝太は大袈裟に嘆いてみせる。
 そんな勝太へ朋絵は的確なフォローを入れた。

「そんなことないよ、嬉しいよ。ありがとう、勝太ちゃん」
「優しいな〜朋絵は。ならろー!」

「『ならろー』?」
「『not at all』じゃないか?」
「あ、なるほど」

「おあ?」

 自分の言葉を拾った会話が聞こえ、勝太は背後を振り返る。
 視界には、こちらへやって来る二人の男子生徒が映った。

「おお。祥生〜京太郎〜」
「キョータ、ヨッシー、おつかれさま!」

 昼食を携え現われた祥生と京太郎は歓待を受け、4人が座るシートに腰を下ろした。



 昼休み開始から15分。幼馴染6人は、本日も昼食会への出席率100%であった。


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