創作

□御伽噺異伝 陸
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カウ、カウ、カウ
鶴が鳴く
広い広い草の野に、真白な鳥の声響く

幾月後、若者が二人訪ねれば、
翁の家のその上空、真白な鳥が一羽舞う

地から翁とその妻が、
娘の名前で鶴を呼ぶ

己を求める二人の影を、
鶴は空から眺めやる

しかし鶴は帰らない

誓い破れば帰るのみ

翁の声には応えずに、
仲間の元へ帰るのみ

そうして鶴は地を離れ、雪の空を旋回する

カウ、カウ、カウ
鶴が鳴く

離れた丘から若者二人、
そういう場面に立ち会った

あれは団子を与えた鶴だと、一人の若者が呟いた
恩を返しに来たのかと、一人の若者が推量する

二人の若者が見つめる中、
翁と妻は涙を流し、
真白な鳥は空へと飛び去る


カウ、カウ、カウ
鶴が泣く


嘆くべきは、天の理か人の業か

報恩の心を差し出されても、
誓い破れば別離は必定


ああ哀しき物語
翁と鶴のその噺、
鶴の恩返しと人語る


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