創作

□あおぞら六重奏〜解放!さあ飛び立とう!〜
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「くる」

 帰りの会が終了した直後。亜岡京太郎は一言呟き、突然椅子から立ち上がった。

 普段は象のようにゆったりとしている京太郎だが、その瞬間はネズミ並みの俊敏な動きを見せた。

 出席番号が一番の京太郎の席は、最前列の廊下側に位置している。
 廊下への出入りのし易さでは一、二を争うポジションだ。

 教室中から驚きの視線を浴びつつ、京太郎は堂々と扉を開けて廊下へ出る。
 呟きからここまで、僅か2秒しか経っていない。

 何事かと、クラスメートが開け放たれた扉の向こうを窺い見る。

 八組以外でも帰りの会が終わったクラスがあるようだ。
 廊下にはちらほらと生徒や教師の姿が見える。

 しかし、京太郎だけは背筋を伸ばして立ち尽くし、じっと前方を見据えている。

 物静かな男子生徒の突飛な行動。
 意味が判らず困惑するクラスメートが多い中、祥生だけがピンときた。


 そして10秒後。
 彼が見つめる廊下の先から、慌ただしい足音が聞こえてきた。
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