創作

□御伽噺異伝 対
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 昔々あるところに、鬼達が住まう鬼ヶ島という島国がありました。
 そこには屈強な体躯を持つ鬼達が集い、近海の漁場を占有し、人間達の集落を度々襲っていました。

 そんな鬼ヶ島を統率していたのは、なんと一人の人間でした。

 力が強く気性が荒い鬼達の世界は実力主義です。多くの鬼を纏め、統率していくには何よりも強い力が必要でした。
 そしてその人間は、人でありながら鬼にも負けない腕っ節を有し、一本芯の通った性格も相まって国中の鬼達から慕われていました。


 なぜ人間が鬼の首領になっているのか。
 それには悲しい過去がありました。


 昔々のそのまた昔、ある村に一人の男の子が生まれました。

 しかし当時その村は飢饉に陥っており、大人は勿論、幼い子供や生まれたばかりのやや子を養うだけの蓄えを持っていなかったのです。

 その男の子が誕生した家も例外ではなく、母親は栄養不足のためお乳すら出ません。
 自分達が今日を生き伸びるだけで精一杯でした。

 身籠る前、それまではなかなか子宝に恵まれず、両親は揃って神様に子を授けて下さるようお願いをしていました。
 けれどいざ子供ができたという時、飢饉が発生したのです。

 望みに望んだ子供でしたが、生まれ出る頃には頭の痛いお荷物になってしまいました。

 飢えが続くと心も干上がり、残酷な定めに嘆く涙すら枯渇していたのです。
 両親は虚ろな瞳のまま赤子を眺め続けます。

 すると、ある恐ろしい幻惑が頭の中に湧いてきました。


―――これは、赤子ではない・・・瑞々しい・・・そう、桃、だ
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