しゃららん
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君の大好きな花は
あまりにも悲しい花だった。
「謙也ってあれだね、かっこいいよね」
「?、ん、ああ…おおきに…?」
気まぐれは突然だった。付き合ってから『好き』も言ってくれなくなった彼女には『かっこいい』というほめ言葉さえ、かなりの気まぐれに入る。
気まぐれを発動した後は何事もなかったかのようにイヤホンをつけて自分の世界に閉じこもってしまった。
世の中には白石たちのような毎日『好き』と言い合えるカップルや千歳たちのようなほのぼのとしたカップル…ユウジたちのような嫉妬し合えるカップルがおる。
それらに比べたら俺たちの関係というのはかなり寂しく冷たい。
冷たいのに暖かい。何故か安心できる。
彼女も俺にそんな信頼があるからこそ安心して自分の世界に閉じこもれるのではないだろうか?
……これはあくまで俺の勝手な思い込み…願いなのだが。
「…今、何て?」
「せやから…引っ越したらしいで?」
朝 いつもより早く学校に来てみると白石から変なことを言われた。彼女が昨日引っ越した。
何故 彼氏である俺じゃなく白石が知っているのか。そこに腹が立った。
そうか。俺はやはり信用されてなかったのか。彼女の中で俺は『信頼できる彼氏』ではなく『信頼できる友人』だったのか?
「あ、謙也くん!あの子からね手紙預かってるの」
白石の彼女でありアイツの親友が白石の隣に並んで俺に白い封筒を渡した。
白い封筒には『謙也へ』と彼女の小さい字。中を見ると無駄にでかい紙が1枚、それと栞。
彼女の繊細な文字が白い紙の上に書かれている。内容は『好き』と『ごめんなさい』だった。何に対しての謝罪か始めは検討もつかんかったけど…なんとなくわかった。
きっと彼女は『彼女らしいことが出来なくてごめんなさい』と書きたかったのではないか?
栞には押し花にされた勿忘草。裏には勿忘草の花言葉。
わたしを忘れないで
( それはまるで彼女の叫び )
thanx...『花天月地』 さま
100821 hiroco