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□薔薇色薬
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「…ッ、はぁ…はぁ…」


僕は暗い部屋の片隅で一人、熱い吐息を溢していた。


身体が熱い。
少し風邪気味だったので彌涼のもとへ薬を貰いに行った数十分前。
机の上にある薬を持っていってくれと言われ、それらしきものを持ってきた。

それを飲み、現在に至る。

「くっそ…!彌涼の奴ッ、適当にしやがって…!!」

文句を言いに行きたくても身体に力が入らなかった。
どうすればいいのか分からない。


不意に扉を叩く音がした。

「…黒刀?」

千紫郎の声だった。

「ッ!!…はっ、入ってくるな!!」

こんなみっともない姿を見られたくない。
思わず怒鳴ってしまった。

「黒刀…なんかあったの?」

慌てて立ち上がりドアを押さえようとすると、襟が首に擦れてそれだけで感じてしまう。

「あ…ッ」

「黒刀!?」

思い切り変な声をあげてしまい、千紫郎が部屋に入ってくる。

「…黒刀ッ!?」

「あ…ハッ、千紫…郎…」

「どうしたの?こんなに真っ赤になって…」

パシン

「あ…」

「あ…えと、ゴメン…」

思わず千紫郎の手を叩いてしまった。

「…どうしたの、何かあった?」

またいつもの優しい顔で微笑みかけてくれる。
あぁ、なんて優しい奴なんだろう。

「ゴメン…お願い、だから…ハァ…一人に…して…」

「……。」

呆れられただろうか。
でも気をつかう余裕なんてもうなかった。

不意に後ろから暖かい感触。

「ぇ…、」

千紫郎が僕を優しく抱き締めた。

「黒刀…何があったか俺に教えて?俺たちパートナーなんだから…もっと俺を頼ってよ。」

優しく甘く、心地よい低音が響く。
不安が溶けて涙が溢れた。

「ふっ…ぅ、身体が…おかしくて…よく、分かんなく…て…ぅ…ッ」

「身体が…?なんか飲んだりした?」

「そこの…く、すり…」

「これ?」

そう言って、すぐ傍に落ちている薬を拾った。
きついピンク色の、薬。

「これって…この薬どうしたの?」

「彌涼が…ァ…風邪薬って…ッ、机の上にあった奴…」

「飲まされた…とかじゃないよね?」

「…?、うん…」


千紫郎は少し考えてから、僕を抱き上げた。


「…ッ!?なっ…」


そのままベッドの上に降ろされる。


「千紫…郎…?」

「黒刀が飲んだのはたぶん媚薬。」

「び…やく?」

「うん。身体…熱いでしょ?」

「んぅ…、ぁ…」




 


千紫郎が俺の頬を撫で上げると、身体が疼くのを感じた。

「ん…ど…したら…」



「…俺と、する?」



 
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