短編@

□大きな背中
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彼の背中を大きいと思い始めたのはいつ頃からだっただろうか。

――あぁ、確か『高校生連続通り魔殺人事件』の頃。



+++



私が怒りに身を任せ新聞を叩きつけた。
そのせいで新聞は破れてしまい(正確にはそれをはさんでいたバインダーも破壊された)、堂上教官に買ってこいと命令された。

建物を出ると、凄い数の報道陣が待ち構えていた。
矢継ぎ早に質問され、――何を喋っても図書館の不利になる。
それを分かっていたのに、私は怒りを押さえ切れず、怒鳴りつけようとした刹那、――堂上教官に助けられた。


建物に戻った後、堂上教官の言葉が私の強張っていた気持ちに入った。
思わず涙を流した私に、戸惑いながら「ハンカチ代わりだ」と言って肩を貸してくれた。
私を落ち着かせる為に突っ掛からせてくれた。
私が言い返す理屈が尽きた頃、堂上教官は「よし、それだけ文句が言えたら大丈夫だろう。戻るぞ」と言って軽く頭を叩いた。



多分、その時。
自分よりと身長は小さいのに。
それなのに…

くそ。でかい。

そう思い、無意識に唇を軽く噛んでいた。



あの頃から2年。
まだ、彼の背中は大きい。

いつか、抜けるだろうか。
あんな風になれるだろうか。

それでも、私は今日も走る。
少しでも彼に近づく為に。



[大きな背中]



(…それでもいつか越えてやる!!)((なんだ?さっきから強い視線を感じるんだが…))



↑御題元・Silence
 

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