短編@

□バカな人
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「アホか貴様はッ!」



今日も朝から堂上の怒鳴り声が響く。



「今日は何をやらかしたんでしょうか」



そう言って近付いて来たのは手塚だ。



「どうやら笠原さんが書類のミスしちゃったらしくてねー」



そう言いつつもコーヒーを淹れる。



「それにしても、堂上はホント良くやるよ」

「何がですか?」

「毎日飽きもせずにああやってるのがだよ」

「そうですね…」



そう呟くと手塚は顔をしかめた。



「どうしたの?」

「いえ…」



手塚の事だ、きっと堂上がどれだけ大変な思いをしているのかを想像したんだろう。



「…でもさ、楽しそうだよね。堂上」

「…そうですか?」

「うん。これは長年一緒にいないと分からないと思うけど」

「……?」



手塚は何かを考えながら自分の机へと戻った。



そう、お前は楽しんでるんだ、堂上。
きっとお前はまだ気付いてないけどね。

でも、時々イラッとするんだ。
これだけ想い合っているのがバレバレな二人なのに、どうしてさっさとくっついちゃわないんだか。



「小牧、どうかしたか?」



いつのまにか堂上が俺の近くにいた。
どうやら笠原さんへの説教はひとまず終わったらしい。



「いや、別に……何で?」

「さっきからやけに楽しそうな顔でこっち見てたからな」

「そんなに楽しそうだった?」

「ああ。…本当に何もないんだな?」



その言葉を聞いて笑ってしまう。
楽しそうなのはお前の方なのにさ。




[バカな人]



(堂上ってホント馬鹿だよね)(…それは俺に喧嘩を売ってるのか?)(さあ)(おい待て小牧ッ!!)



↑御題元:空をとぶ5つの方法

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