短編@
□真冬の向日葵
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仕事の帰り道、息を吐くと白かった。
…本当に寒くなったな。
そう思ってからはっとする。
俺ももう年なのか?
去年はこんなふうに感慨にふけることもなかったはずだ。
そんな事を考えていると、急にマフラーを巻き付けられた。
不意討ち、だった。
「うわッ!何だ急に!?」
「だって篤さんが寒そうだったから…」
そう言うと彼女はニコリと笑った。
「それに私も寒かったし、こうすると一石二鳥ですよ!ね?」
彼女が笑う。
それだけで俺は温かくなる。
不思議と、寒さも感じられなかった。
「…ったく、お前は…」
「エヘヘ」
笑った顔は、向日葵のようで。
こんな季節に咲く向日葵もいいもんだ、と思った。
「郁、向日葵の花言葉って何だ?」
「え?何ですか急に」
「ただ気になっただけだ」
「えーっと、確か…『あなただけを見つめる』だったと思うんですけど…」
「クッ…!!」
「え、ちょ!何で笑ったんですか!?」
[真冬の向日葵]
((あまりにもピッタリすぎて、思わず笑ってしまった))
御題元・Silence