短編B

□抱き締めてあげる
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「寒ッ!」



そう言って早足で歩く郁を急いで追いかける。
さすが特殊部隊というか、訓練速度では追い付けない速さだ。
追いついた、そう思ったら目の前に玄関のドアがあった。


家の中に入るといくらかは暖かいが、それでも寒い。

上着を脱いでハンガーにかけようとしたところでトン、と背中に軽い衝撃。



「…郁?」

「篤さん寒そうだったから、」



抱き締めてあげる。
そう言って背中にひっついてきた。

ハンガーにかけてから振り返り、負けじと抱き締める。



「暖かい…」

「お前は本当に子供並みに体温が高いな」

「なんですって!?」

「そう怒るな。この時期は重宝するから」

「褒めてないよねそれ!」



郁の反応に笑うと余計に怒ったようで。
俺から離れようと押してくるが、



「離れてなんてやるものか」

「ちょ…苦しい!」



〔抱き締めてあげる〕



(暖かいだろ?)(ええ暖かいです!もう充分です!だから離れて!)(離れない)(なんでいつもこうなるかな…)

御題元・Silence

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