短編B

□恋人か、友達か
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昼下がりの図書館。
堂上班は遅めの昼食をとり、一息ついたときだった。
台風のような彼女が執務室に入ってきたのは。



「笠原!堂上教官か私、どっちなの!?」

「…は?」

「だから、どっちなのよ!」

「いや、意味が分からないんだけど…」

「さっさと答えなさい!」

「手塚help!柴崎に日本語が通じないんだけど!」

「光は来んな!」

「え…」



あからさまに落ち込んだ様子を見せる手塚、それを全く無視して私に詰め寄る柴崎、案の定上戸に陥っている小牧教官。

ここで気がつく。
私を助けてくれる存在がいないことに。



「それで、結局私と堂上教官のどっちが好きなのよ」

「え、好きな方を聞いてたの!?」

「そうよ、それ以外になにがあるのよ」



そう言われて言葉に詰まるが、今回のことに関しては私は悪くないはずだ。
言い返そうとすると、先に柴崎が口を開いた。



「で、いい加減答えなさいよ」

「え…と、柴崎と篤さんは好きの意味が違うから答えられない」

「それじゃ面白くないじゃない」

「……」



私の回答に面白さを求めていたのか。

完全に沈黙した私に対して、また笑いはじめた小牧教官。
この状況をどう打開するか考え始めたその刹那、私の待ち望んでいた人の声が聞こえた。



「どうした?」

「篤さん!」



思わず飛びつこうとするが、その直前で周りに人がいることを思い出し、彼の元に駆け寄った。
しかし、涙目の私を見た篤さんはぎょっとして、それから頭を撫でた。

あぁ、私が我慢した意味がないよ篤さん…。
そう心の中で呟くと同時に、柴崎の舌打ちが聞こえた。



〔恋人か、友達か〕



(私の前でいちゃつくなんて)((…柴崎、今日はやけに荒れてるけどなんでだ?))((半分は篤さんのせいだと思う…))

御題元・Silence

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