短編B

□幸せな苦悩
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トン、と左肩に軽い衝撃がきた。
そのまま動かなくなったので気になって視線を本から左肩にうつす。
そこにはすやすやと寝入る郁の頭がのっていた。

起こすべきか、そのままにしておくべきか。
少し悩んだが、そのまま寝かしておくことにした。
幸いにもリビングのストーブはついており暖かい。
たまたまソファーに置いてあった膝掛けを彼女にかけてやる。

再び本を読もうと手に取るが、少し体勢を崩そうとすると彼女が危なげに首を揺らした。
その様子を見て体勢をかえる訳にはいかず、本を読む気にはなれなかった。
続きは気になるが、まぁいつでも読めるか。
しおりを挟んで机にそっと置いた。



「…さて、」



どうしようか。
隣を見ると、そこには幸せそうな顔が。

右手をそっと伸ばし、髪に触れる。
彼女の髪は自分の堅い髪と違い、柔らかくてさらさらで手触りがいい。
そのためついつい触ってしまう。
寝ているのをいいことに、何度も何度も髪に指を通す。



「ん…?」

「起きたか」

「…え、あれ、いつの間に」



ごしごしと目を擦る郁を見て笑う。



「何で笑ってるんですか」

「いや…お前は本当に動物みたいだな」

「それ褒めてます?」

「褒めてる。可愛い」

「なっ…!」



〔幸せな苦悩〕



(さて、今から2人で何をしようか)

御題元・Silence

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