短編B
□ご褒美
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「ご褒美ください!」
そう言った君がかわいすぎて、ずっとその言葉が頭に残っていた。
だからきっと、俺が特に何も考えずに口に出してしまったのはそのせい。
「…褒美、か」
「どうしたんですか?」
郁に不思議そうな顔をされてから気づいた。
今、俺は何を呟いた…!?
「…あれだ、その…今日はいろいろと頑張ったから…褒美がほしくて、な」
我ながら怪しすぎる。
けれど真っ直ぐな妻は特に気にも留めずに返事をした。
「いいですよ、じゃあ…」
はい、これ。
そう言って差し出されたのは飴。
「…飴?」
「はい、飴です」
「……」
「嫌ですか?なら私が、」
彼女に言葉の続きを言わせないよう、唇をふさいだ。
〔ご褒美〕
(…急に何するんですか!)(飴よりも、こっちのほうがいいから、な)
御題元・Silence