短編B

□強がりの本音
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「かわいい」だとか「美人」だとか「綺麗」だとか。
そういう言葉はもう聞き飽きたの。
言われたって、ちっとも嬉しくない。
ときめかない。



「おい麻子」

「ん―…」

「お前そんな所で寝たら風邪ひくぞ」

「ん―…」

「…ったく、」



光がため息を吐き出して、私の背中と膝下に手をまわした。
そのまますっと持ち上げられる。
いわゆるお姫様抱っこ。

何だか楽に持ち上げられたことが妙に悔しくて、光の首に腕をまわす。
その状態のまま寝室に運ばれた。
ゆっくりと、優しくベットの上に降ろされる。



「着いたぞ」

「ん」

「…腕離さないと俺戻れないんだけど」

「やだ」

「やだってお前な…」



呆れたようにこっちを見たあと、彼もベットの上に寝転がった。



「麻子」

「んー?」

「お前こういうとき無駄にかわいいな」



嬉しくない。
ときめかない。
そう思っていたけれど、どうやら違うようだ。
彼の言葉だけは、私の心を動かした。



〔強がりの本音〕



(ねぇ、光)(なんだ?)(もっと)(…?)(もっと言って。もっと、もっと)(…かわいい。外見も勿論だけど、性格もかわいい)

御題元・Silence

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